アブストラクト(26巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 乳幼児体外循環における血液希釈率について
Subtitle : 原著
Authors : 川村光生*, 宮田義弥*, 小林淳剛*, 南川紀**, 横地浩史**, 牧葆雄**, 安田敬志**, 水川豊**, 榊原欣作***
Authors(kana) :
Organization : *名古屋大学医学部第1外科, **名城病院心臓外科, ***名大病院高気圧治療部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 2
Page : 155-162
Year/Month : 1978 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 乳幼児開心術においても血液使用量をできるかぎり節減する目的で, この数年間体外循環時の血液希釈率の高度化につとめてきた. 体重10kg以下の心室中隔欠損症を対象に, 安全に体外循環を行うことのできる血液希釈率の限界について検討を行った. 体外循環はTemptrol小児用人工肺に小型ローラポンプを組み合わせ, 常温潅流を用いた. 装置内充填血液量の節減につとめた結果, 希釈率は20%から57%と漸増した. 希釈率の高度化につれ, 潅流開始直後のoxygen carrying capacityの減少を代償し, 60mmHg以上の平均動脈圧を維持するためには, 潅流指数で3.0L/m2/minから6.5L/m2/minの潅流量が必要となった. しかし希釈率が50%を越え, 潅流指数5.0L/m2/min以上の高流量となると, 末梢組織での酸素摂取量の低下や静脈還流の減少がみられるなど至適潅流の維持が困難となった. 一方, ヘモグロビン, 血小板, 血清総蛋白などの血液成分は希釈率の大小とはかかわりなく, 潅流中からの積極的な利尿や人工肺内残留血液の再輸血によって, 術後1週間でほぼ術前値に回復し, 重篤な合併症もみられなかった. 2時間程度の体外循環時間内で心内操作を終了することのできる症例であれば, 血液ガス, 血行動態, 酸塩基平衡および電解質の頻回なチェックと補正など適正な管理を行うことによって, 体重10kg以下の乳幼児といえども常温下で, 希釈率50%の高度希釈体外循環を安全に行うことができる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 乳幼児体外循環, 血液希釈率, 常温高流量潅流
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