Abstract : |
6歳, 女子, 入院5ヶ月前, 心房中隔欠損症兼肺高血圧症の診断で, 人工心肺下, 心房中隔欠損孔直接縫合術を行ったが, 術後心カテーテル検査で, 右下肺静脈の下大静脈横隔膜直上部に異常還流する部分肺静脈還流異常兼肺高血圧症が残存していることが判明し, 再手術のため入院した. 2期的手術方法として, 人工心肺や低体温法を使用せず, 右開胸により, 左房の部分遮断のもとに, 還流異常静脈を左房に直接端側吻合し得た. 術後心カテーテル検査では, 短絡の消失と, 肺動脈圧の正常化をみた. 本症例は, 文献上, 部分肺静脈還流異常症の中でもきわめて稀な型であり, 本邦での報告は見あたらない. また手術方法も, 補助手段を使わず, 肺静脈の左房移植を行った点が独特な方法であり, 今後, 症例により応用できるものと考える. 部分肺静脈還流異常症(以下PAPVCと略す)に心房中隔欠損症(以下ASDと略す)を合併したものは, 先天性心疾患の中で比較的少ないが, 中でも, 右下肺静脈が下大静脈へ異常還流している型はきわめて少ない. 今回われわれは, 第1回目の手術時, 単純なASDと診断し, 人工心肺下に直接縫合閉鎖術を行い, 術後19日目, 右下肺静脈の下大静脈への還流異常の残存に気づき, 2期的手術方法として, 人工心肺, 低体温法などの補助手段を用いることなく, 左房の部分遮断下に, 同部へ還流異常静脈を直接吻合し得たので報告し, 若干の文献的考察を試みた. |