アブストラクト(26巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 低体温の研究-循環遮断の脳循環におよぼす影響-
Subtitle :
Authors : 川上俊爾1),2), 青景和英1),2), 中山頼和1),2), 水取悦生1),2), 笠井敏雄1),2), 妹尾嘉昌1),2), 寺本滋1),2), 小杉功3)
Authors(kana) :
Organization : 1)岡山大温泉研究所, 2)岡山大学第2外科, 3)帝京大学麻酔科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 6
Page : 663-671
Year/Month : 1978 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 潅流冷却低体温法を補助手段とする開心術後に脳障害を呈することがある. この原因は現時点でもなお不明な点が多い. われわれはこの原因を追求するため, 低体温時の脳循環に注目し放射性徴粒子法を用いて脳血流量を測定, またin vivoで脳組織ガスを連続測定した結果, 脳温20℃までの冷却過程において脳血流量は温度の下降により減少するが, 脳酸素供給量の減少より脳酸素消費量の減少がより大きいため脳酸素負債は生じないことを明らかにした. 今回は脳温18℃で30分間および60分間の循環遮断を行い, 低体温下循環遮断の脳循環におよぼす影響について検討した. 1)循環遮断解除後脳血流量は循環遮断前値に比較して, 30分間停止群では40%有意に増加したが60分間停止群では逆に60%有意に減少をみた. この減少はno reflow現象によるものと推察した. 2)循環再開後, 60分間停止群では遮断前に比較し脳酸素供給量が著減し, 脳酸素摂取率が増加したが, 30分群ではこのような変化はみられなかった. 3)脳組織炭酸ガス分圧は循環停止の間, 経時的にほぼ等しい増加率で30分群では増加したが, 60分群では遮断45分頃から増加率は減少した. 4)脳組織酸素分圧は循環再開後, 30分群ではすぐ上昇するものが多かったが, 60分群では脳温が25℃付近まで復温されるまでその上昇を示すものが少なく, この期間脳血流量は低値であったものと推察された. 5)35℃に復温された時点では両群間に脳血流量に差はみられなかった. 以上から脳温18℃で, われわれの方法の潅流冷却で循環遮断許容時間は45分前後と推察した. この時間以内であれば復温過程で脳循環は良好に保たれる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 低体温, 脳循環, 循環停止, 放射性微粒子, 脳組織ガス
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