Abstract : |
生体はHypoxiaに対して迅速に循環動態を対応させるとともにO2運搬の媒体である血液のO2親和性を低下させ末梢組織へのO2運搬能を亢進させる. この代償機構には, 赤血球内2,3Diphosphoglycerate(2,3DPG)の変動が重要な役割を果しており, 心疾患においてもその役割が明らかにされつつある. これら心疾患の手術には2,3DPGの減少し, O2親和性の亢進したACD保存血を用いた体外循環が, その補助手段として使用されることが多い. 本研究においては体外循環における2,3DPGとO2親和性の変動を検討し, 使用血液による比較検討を行った. 心房, 心室中隔欠損症6例, ファロー四徴症(TF)9例, 後天性僧帽弁膜症14例, 計29例を対象として, 無血充填, ヘパリン化新鮮血, ACD保存血をそれぞれに使用してECCを施行した. 1時間前後の無血充填のECCでは, 2,3DPGおよびP50(7.4)は変動せず正常域に保たれており, 人工心肺による影響は認められなかった. TFに対し新鮮血を使用したECCでは術前, 2,3DPGおよびP50(7.4)は著しく高値を示しておりECC中漸減してECC後には正常化した. 後天性僧帽弁膜症に対して保存血を使用したECCでは, 2,3DPGおよびP50(7.4)は, 有意に上昇していた術前値からECC中は有意に低下し, ECC後には保存血を使用したためさらに低下し正常値以下となった. 5例に対しadenine inosineを投与し, 2,3DPG増加効果を検討したが, 有意の増加を示さず, 高尿酸血症が随伴した. 以上より, ECCにおける2,3DPGおよびP50(7.4)の変動は使用血液による変動が大きく, そのものに起因する影響および内因性の変動は乏しいと考えられた. ECC中のPvO2の比較から2,3DPG含量の違いに惹起されたと考えられる血液の末梢組織へのOxygen Unloadingを示唆する所見は認め難かった. |