Abstract : |
先天性僧帽弁閉鎖不全症における, 弁形成術の方法および術後評価について34例の自験例をもとに僧帽弁の解剖学的所見とを照合し検討した. 本症は, 僧帽弁の形態や合併する心奇形によって手術成績が異なるようである. (1)孤立性僧帽弁閉鎖不全症(isolated MI)の弁形態は腱索の短縮, 弁尖の亀裂, 弁尖の退縮などを示すが必ずしも単一な異常でなく, 時に僧帽弁付属器の多くの異常を合併する. 最終的に人工弁置換術が必要となった2例はいずれも弁尖自身に縫合針をおいたものである. また弁輪縫縮を施した1例では術後8年後の胸部X線像からも良好な結果であることが明らかだった. (2)心房中隔欠損に合併する僧帽弁閉鎖不全(ASD+MI)では弁尖亀裂を示すものが多く弁尖の亀裂縫合にせよ, 弁輪縫縮術にても術後経過は一般に良好である. ASD+MIはVSD+MIに較べ左室肥大の所見がなく心筋にも切開が加わらないため余程の無理が無い限り術後急性期の危険も少ない. (3)心室中隔欠損に伴う僧帽弁閉鎖不全症(VSD+MI)では, a)弁尖の亀裂, b)腱索の不足および短縮, c)後尖の弁尖の面積が小さいなどと形態上分類することができ, また他合併疾患に比し, イ)術前からの心筋障害が強いこと, ロ)肺高血圧症を合併する頻度が高いことなどがあり手術手技上充分な注意が必要である. 膜性部欠損であれば, できる限り右房切開にてこれを閉鎖している. MIに対しては, 大きく交連部に弁輪縫縮を施せば多くの症例で逆流を止め得る. 弁尖自身に縫合針やパッチなどを使用することは長期的観察において余り良い結果が得られないようであり極端に大きな欠損をのぞけば弁輪縫縮術(交連部)で充分に閉鎖不全を防止できうると考えている. |