Abstract : |
1968年5月より1976年9月までに, われわれが直達冠動脈手術を実施した心筋梗塞症25例のうち, 術前後に左室機能を測定しえた急性心筋梗塞4例・陳旧性心筋梗塞10例を対象とした. 左室機能のパラメーターとして左室駆出率(EF), 左室終末拡張期圧(LVEDP), 左室壁部分収縮率(SM)を術前後で測定し比較検討した. 梗塞例は非梗塞例(狭心症)に比べEF・LVEDPは術前低値を示したが術後の改善は良好であった. SMは術前, 心尖部で低値を示したが術後各壁とも良好な改善を示した. 病変枝数別検討では, 術前病変枝数の増加に伴ってEF・LVEDPは低下したが術後は全群良好に改善した. SMは前壁で病変枝数の増加に伴い良好に改善した. 心尖部は前壁より低値を示し, 下壁は3枝病変例で術後, 術前値を下回り収縮力の改善し難い部分である事を示した. 急性心筋梗塞症・陳旧性心筋梗塞症の間には手術前後で相異を認めなかった. 左室瘤合併症のうち瘤切除群と瘤切除+バイパス群の比較では, 術後短期評価による血行再建術の効果は認められなかった. 瘤合併例と非合併例の比較では, 瘤合併例は術後非合併例と, ほぼ同値までポンプ機能の改善を認め, 瘤切除の有効性を確認した. 重症合併症である心破裂・僧帽弁逆流・心室中隔穿孔の3症例は術後良好な左室機能の改善を示した. 期外収縮直後の搏動時EFと正常洞調律時EFの差が0.1以下の症例は術後の死亡例が多かった. とくに重症心筋梗塞症の術後の予後を判定するのに有効である. |