Abstract : |
虚血性心疾患の外科療法後に出現する不整脈は, 他の心手術に比較して特異的ではないが, しかし術後の循環動態, 予後に大きい影響を及ぼす. 術後不整脈出現と手術時間, 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 術後左室機能, 術後肺機能, 年齢, 冠動脈病変枝数, バイパス枝血流量との関係について検討するために, 大動脈-冠動脈1枝バイパス症例34, 2枝バイパス症例13, 3枝バイパス症例5, Bridgeバイパス症例7, バイパス術+合併手術症例16の合計75症例について, 術後不整脈の出現しない症例と比較検討した. その結果, 術後不整脈は高年齢で冠動脈病変枝の多い合併手術を伴った症例に多く出現し, また手術時間が5時間以上, 体外循環時間が2時間以上, 大動脈遮断時間が35分以上の症例では術後不整脈の出現が多くなり, またバイパス枝血流量が100ml/min以下になると術後不整脈は多く出現した. 左室機能は術前に比較して, 明らかに術後改善が認められるが, 不整脈のない症例に比較しては低い値を示した. また術後不整脈の出現した症例は, 左室駆出率の著明な改善に比べ心係数の改善した値は低かった. 肺機能は術後比肺活量30%以上の低下症例に術後の不整脈の出現程度が多く認められた. 術後不整脈の出現は年齢, 冠動脈病変枝数, 合併手術を除くと, 手術時間の延長, 体外循環時間の延長, 大動脈遮断時間の延長, バイパス枝血流量の程度が最も強い影響を及ぼすことを明らかにしえた. |