アブストラクト(26巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道癌術後遷延性低酸素血症の成因に関する研究ならびに術後肺合併症予防に対する一考察
Subtitle : 原著
Authors : 佐々木公一, 武藤輝一
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部外科学第1講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 7
Page : 819-835
Year/Month : 1978 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌術後の肺合併症の発生を術前に予測することは非常に困難であるため, 術直後より肺に起こる病態を正確に把握し, 速やかに対処することが手術成績向上のために重要となってくる. 著者は食道癌術後のガス交換, 肺循環動態の経時的観察より肺の病態生理をとらえ, 術後遷延性低酸素血症の成因について考察するとともに, これに基づく肺合併症予防対策としてのPEEP(持続陽圧呼吸)併用IPPB(間けつ的陽圧呼吸)の効果を中心に, 術後呼吸管理の問題点について検討を加えた. 一期的食道癌切除再建例25例を対象に, 術前より術後第4週までのPaO2の経時的変動を観察するとともに, 術後第7病日までSwan-Ganz-Catheterを用いて肺動脈から採血した混合静脈血と動脈血ガス分析より肺内シャント率(Qs/Qt, true shunt), 不均等換気血流比を求め, 同時に心拍出量, 肺動脈圧, 肺動脈楔入圧を測定し, 機能的残気量, 酸素消費量を併せて実測した. 食道癌症例の術後PaO2低下および低O2血症の遷延傾向は, 対照とした開腹群に比してはるかに高度で, 術後第3病日前後に極値を示した. 術後肺合併症は6例(24%)にみられ, 同群のPaO2最低値は40.7±4.7mmHg(大気中), 245.6±92.6mmHg(純酸素下)で, 非肺合併症群との間に有意差(p<0.05)がみられた. このようなPaO2の変動は肺内シャント率, 機能的残気量のそれとよく相関した. 食道癌術後の低O2血症の主因は無気肺によるtrue shuntの増大で, 肺合併症群ではさらに不均等換気血流分布の影響が加味されたものであった. 術直後より24時間のPEEP併用IPPB施行群ではIPPB単独群に比べて第2病日以後のPaO2低下は軽く, 回復傾向も早期にみられたことから, PEEPの無気肺に対する予防効果がうかがわれた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌術後, 遷延高低酸素血症, 肺内シャント, 肺合併症, PEEP
このページの一番上へ