アブストラクト(26巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 出血性ショックに伴う肺不全 -とくに, 肺血流と換気の関係について-
Subtitle : 原著
Authors : 田苗英次*, 岡本好史*, 徐航霄**, 佐川弥之助**, 安田隆三郎***
Authors(kana) :
Organization : *大津赤十字病院外科, **京都大学胸部疾患研究所臨床肺生理, ***天理病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 7
Page : 847-854
Year/Month : 1978 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 出血性ショックに随伴する急性肺不全の病態生理として, 出血性無気肺や肺細小静脈の収縮を伴った肺血管抵抗の増大とこれに伴う低酸素血症の存在などがとなえられている. こうした肺のガス交換障害あるいは, 肺血流障害によって惹起される肺不全を検索する方法として, Rahn and Farhiによる肺内シャント式を用いた. 肺門シャント式:Qs/Qt=Cc-Cd/Cc-Cv 混合静脈血の採取には, Swan-Ganzカテーテルを使用し, 100%酸素20分間吸入後に, 上式による肺内シャント率と肺胞動脈血酸素較差(A-aDo2)を求めて, 下記の実験群において検討した. 1)非開胸下の出血性ショック群, 2)左肺動脈処置群:A)左肺動脈遮断および左肺無気肺群, B)左肺動脈遮断および左肺換気群, C)左肺動脈非遮断および左肺無気肺群. 第2群においては, 実験終了時に, 液体窒素を用いて, 肺の急速冷凍を行い, 組織学的検索を行った. 以上の実験より, 以下の結果をを得た. 1)出血性ショックによって, シャント率は, 一時的に減少するが, 以後漸次回復の傾向を示した. 血液を還血せしめたた後には, シャント率は, やや上昇した. A-aDo2は, 出血性ショック施行後から還血後にかけて, 漸次上昇の傾向を示した. 2)左肺動脈遮断および左肺無気肺群では, 血流遮断および無気肺の解除直後から, 左肺のシャント率は, 対照値のほぼ3倍の33%まで上昇し, 以後実験終了時まで2時間つづいた. 3)左肺動脈遮断および左肺換気群では, 血流遮断解除直後から, 左肺のシャント率は, 正常値をとった. 4)左肺動脈非遮断および左無気肺群では, 左肺の換気再開後に, シャント率は一時的に上昇を示したが, 直ぐに正常化した. 5)急速冷凍法では, 左肺動脈遮断及び左肺無気肺群においてのみ出血性無気肺, 細小肺静脈の鬱血および肺水腫様変化が見られた. 以上のことから, 出血性ショックに伴う肺不全の成因の主要な因子の1つとして, 肺の低血流及び換気不全の併存が考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 出血性ショック, 肺血流, 無気肺, 肺不全, 肺内シャント率
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