アブストラクト(26巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁狭窄症の外科治療に関する臨床的研究 -開心術症例における弁性状からみた弁切開術の効果に関する検討-
Subtitle : 原著
Authors : 大山朝賢, 曲直部寿夫
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 7
Page : 855-868
Year/Month : 1978 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 直視下に手術を行い, 適正に弁口を切開した僧帽弁狭窄症19例について, 術後平均13ヵ月して安静時ならびに運動負荷時の血行動態を検索した. 手術時に観察した僧帽弁の病理学的変化を, Sellorsに準じて変化の軽度なI型よりこれが重篤なIII型まで3群にわけ, 各群ごとに得られた血行動態の成績を比較すると共に, 手術時の所見ともあわせて検討した. 1)Sellors I型群6例, II型群7例およびIII群6例における弁切開術後の実測弁口面積はそれぞれ平均4.1±0.1, 3.9±0.2および3.7±0.2cm2であった. これら3群の間に推計学的有意差はなかった. 2)術後安静時には術前値に較べ, 左房平均圧(LAm), mean mitral gradient(MMG), diastolic filling period(DFP)は減少した. 心拍出量の平均値は増加の傾向を示したが, 推計学的に有意であったのはSellors I型のみであった. 術後安静時平均LAm, MMGおよびCIには3群間に有意差を認めなかったが, DFPはSellors I型群の値がIIおよびIII型に較べ有意な差をもって短縮していた. LAm, MMGおよびCIは運動負荷によって増大したが, 3群間には有意差は認めなかった, DFPは各群とも運動負荷により短縮し, I型群の値はIIおよびIII型群のそれに較べて短かかった(P<0.05). 3)Gorlin and Gorlinの式より求めた僧帽弁弁口面積(MVA)は, 術後安静時は3群とも術前値に較べて増加し, Sellors I型群の平均値2.6±0.19cm3が最大であり, II型のそれは2.1±0.10cm2, III型のそれは1.5±0.11cm2で各群の間に有意差を認めた. MVAは運動負荷にて術後安静時に比しI型群では増加の傾向をみたが有意差はなく,II型群およびIII型群ではほとんど変化をみなかった. 安静時と同様MVAはI型群の平均値3.1±0.11cm2と最大であり, II型群は2.3±0.23cm2とこれにつぎ, III型群では1.6±0.15cm2と最小で各群の間に有意差を認めた. 4)以上直視下手術によって適正に弁口の切開を行い得た僧帽弁狭窄症症例にあっても, 術後の機能的な弁口面積は均一でなく, その差は術前における弁の病理学的性状によってもたらされるものであることを明らかにした.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, 直視下弁切開術, 弁の病理学的分類, 血行動態, 機能的弁口面積
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