Abstract : |
バイパス併用超低体温法ならびに単純超低体温法による開心術後における血清酵素の変動について検討を加えた. 7歳以下の小児22症例をI.バイパス併用超低体温群, II. 単純超低体温群, III. 右室硬塞群, IV. 対照群に分類し, 術前および術後第1, 第3, 第7病日のGOT.CPK.HBD.LDHおよびLDH.CPKの各アイソザイムを測定し各群について比較検討した. その結果, 1)開心術群では術後いずれの酵素も著明に増加する. 非開心術群ではGOT.CPKは著しく増加するが, HBD. LDHはわずかに増加するにすぎない. 2)LDHアイソザイム分析ではI・II・IV群では第1病日において(LDH1+LDH2)分画が減少しLDH5分画が増加する. 硬塞群では(LDH1+LDH2)分画が増加する. 3)HBDと(LDH1+LDH2)分画との間に有意の正の相関がみられる. 4)CPKアイソザイム分析では各群とも術後早期にMM分画の増加がみられる. LDHおよびCPKアイソザイム分析の結果を総合してみると術後の酵素値の上昇の原因としては(1)手術操作による骨格筋の損傷, (2)表面冷却ならびに循環遮断中の末梢循環障害が考えられ, バイパス併用超低体温法と単純超低体温法との間には本質的な差はないものと考えられる. また(LDH1+LDH2)分画およびCPK-MB分画の増加がみられないことから術中の心筋の保護という点では両者とも安全な方法といえよう. |