アブストラクト(26巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心臓局所冷却法による心筋保護の研究
Subtitle :
Authors : 井野隆史, 長谷川嗣夫
Authors(kana) :
Organization : 自治医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 8
Page : 954-963
Year/Month : 1978 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心臓の局所冷却法は, 心臓の酸素消費量を減少させ, 心筋の無酸素障害を最小限にする目的で, 多くの外科医により研究され臨床に応用されてきた. しかし, どの程度に心臓を冷却すれば最適なのか, 心筋温が何度なら何分間の無酸素状態に耐えうるのか, また無酸素状態後の心機能の回復はどの程度かを表わした適切なガイドラインはいまだ得られていない. そこで, 実験(A)では常温血液潅流によるウサギの乳頭筋実験モデルを用いて, 心筋温, 冠血流遮断時間および心機能回復程度の相互関係を表わしたノモグラムを作成した. 心筋温38℃では20分, 33℃;30分, 28℃;60分, 23℃;90分, 18℃;150分, 13℃;180分の冠血流遮断により80%の心機能の回復を得た. このことから38℃から18℃の間では, 温度を10℃下げると冠血流遮断時間は約2.5倍延長できることがわかった. しかし, 13℃ではそれほど遮断時間は延長できず, 18℃前後を最適な温度と考える. また, 各温度で80%の心機能の回復を得た冠血流遮断時間は, 摘出した心臓を確実にしかも均等に冷却した場合において, その温度の冠血流遮断の安全限界時間と思われる. 実験(B)では, 犬の心膜腔内潅流法を用いて心臓局所冷却による心筋の冷却様態と保護効果を研究した.この局所冷却法では, 心内膜層と外膜層とで5~6℃の温度較差を生じた. 最大限の心筋保護効果を得るためには心臓をできるだけ均等にしかも確実に冷却する工夫が必要であった. 18℃前後まで確実に心臓全体を冷却すれば, 90分間の冠血流遮断後の心機能の回復は良好で心臓は充分耐えうると考える. 冷却による組織の代謝および酸素消費量の低下率と, 冷却による安全な冠血流時間の延長率とを文献的に比較検討した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心臓局所冷却法, 心膜腔内潅流法, 心筋保護法, 乳頭筋実験モデル, 酸素消費量と温度
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