アブストラクト(26巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 膜型人工肺の性能と安全性に関する基礎的ならびに臨床的研究
Subtitle :
Authors : 金有世, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 8
Page : 973-985
Year/Month : 1978 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 膜型人工肺は最近, 開発が進み実用性が増大している. 臨床応用例も多数報告されているが, その使用方法, 使用適応などについては全面的に解決されたとは言い難い. 著者は教室における各種膜型人工肺の研究の一環としてLande-Edwards膜型人工肺(以下LEMOと略記)(Model 5110-1および5110-3)の性能と安全性に関する基礎的研究をおこなった. LEMOはモデル回路を用いた基礎実験に5例, 動物実験に12例, 臨床例に51例(開心術42例, 補助循環9例)に使用した. 開心術症例については使用体外循環回路別にその性能と安全性を比較検討した. 対照群として札幌医大(和田式)All-In-One気泡型人工肺(以下WOと略記)を用い, 次の結論をえた. 1)LEMOの体外循環回路として, ポンプにより脱血液を人工肺に送血する方法(回路I)と落差により脱血液を直接人工肺に導びく方法(回路II)とではガス交換能, 溶血量に差はない. 回路II使用により人工肺内抵抗の増加による静脈血の落差脱血不全, ガス交換能の低下をきたすことがあり, 回路Iがより安全であった. 2)開心術においてはLEMO 1m2肺では体重8Kgまで, 3m3肺では35Kgまでがガス交換能よりみた安全使用限界でガス交換能はLEMOよりWOの方が優れていた. 3)開心術においては溶血量はWO例が最も高値を示し, LEMO例に比し2倍の溶血量を示した. 4)開心術における潅流中の血小板値, 総蛋白量はLEMO例とWO例との間に有意差をみとめなかった. 5)補助循環例においては終始安定したガス交換能を示すとともに潅流中の血漿Hb値はほぼ150mg/dl以内にとどまった. 以上よりLEMOは, 長期体外循環に最も良い適応があると考えられるが, より広い臨床応用のためにはガス交換能の向上や人工肺内部の構造, 血行動態からみた研究を進め, その性能と安全性の改善をはかる必要があると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 膜型人工肺, Lande-Edwards膜型人工肺, 体外循環, 補助循環
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