アブストラクト(26巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 特発性乳糜胸の1手術治験
Subtitle :
Authors : 大路明, 佐野均, 松森正之, 橋本兼太郎, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 8
Page : 992-996
Year/Month : 1978 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 特発性乳糜胸は非常に稀な疾患で, 従来, 外科的療法には期待がもてないとされてきた. われわれは, エバンスブルーによるリンパ管造影法を補助手段として用い手術に成功を収めた. 症例は42歳の男性で, 外傷の既往はなく, リンパ管造影や手術所見から特発性乳糜胸の確診をえた. 胸腔穿刺の反復や, 低脂肪食などの保存的療法が8ヵ月間続けられたが, 効なく, 全身倦怠感, 歩行時の呼吸困難を来したので, 手術に踏み切った. 胸腔内に, 腫瘍やリンパ管腫はなく, Th12の高さで1cmにわたり胸管の狭窄像を認めた. 狭窄部を中心に4cmにわたり胸管を切除した. 翌日胸腔内ドレーンより, 乳糜の流出がみられたため, 第3病日に再開胸すると, 前回の手術前に足背から注入したエバンスブルーによって青染された縦隔内のリンパ管を発見, これを十数か所で, 徹底的に結紮し乳糜の洩れのないことを確かめた後, 同部を縦隔肋膜で強固に被覆し, 更に体壁肋膜を擦過し, タルク末を撤布して肋膜癒着の形成を計った. 切除した胸管, リンパ管及び肋膜の病理組織像には乳糜胸の原因となるような所見はみられなかった. 術後経過は良好である. 特発性乳糜胸であっても, 長期にわたる内科的療法の無効な症例には, 全身状態が悪化する以前に, 慎重かつ積極的な手術療法にふみきるべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 乳糜胸
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