アブストラクト(26巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸腺腫の手術成績と治療方針についての考察
Subtitle :
Authors : 田中聰, 大本武千代, 谷崎真行, 瀬尾剛, 元広勝美, 万代矩之, 寺本滋
Authors(kana) :
Organization : 岡山大学医学部第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 9
Page : 1039-1046
Year/Month : 1978 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室で経験した通常型胸腺腫43例の治療成績を, 肉眼的増殖型と組織型について調査し, この結果に文献的考察を加えて胸腺腫の治療方針について検討した. 肉眼的増殖型において非浸潤型を示した胸腺腫は20例で, 19例に治癒手術が行われたが, 重症筋無力症死1例を除き, 3年以上経過11例, 5年以上経過8例を含め全例が生存中で再発例はない. 3年以上経過11例の腫瘤長径は2例を除き5cm以上で平均8.4cmであり, 手術術式としては9例には腫瘤摘出ないし胸腺部分切除のみが行われ, 附加療法としても術後放射線療法と抗癌剤投与が各1例に行われたにすぎないが, 組織型とは無関係に治療成績は良好であり, 血管内増殖や組織学的悪性像を示さない非浸潤型胸腺腫は, 良性腫瘍としての治療法によりその再発を防止しうるものと考えられた. 一方, 浸潤型胸腺腫23例では, 16例が非治癒手術または試開術におわり, うち3例を除いて術後2年未満で死亡したが, 治癒手術の行われた7例(うち6例は隣接臓器合併切除)では1例が重症筋無力症によって死亡したほかは全例生存中で, うち5例(2例には術後照射を施行)は術後3年以上生存中であること, また遠隔転移は臨床的には非治癒手術2例の末期にのみ証明されたことから, この型の胸腺腫に対する積極的な局所広範囲切除術の意義と必要性が認められた. 腫瘍構成細胞とその優劣による組織型分類と治癒手術例の治療成績との間には関連性は認められなかったが, 上皮細胞型ならびに上皮細胞優位型では, 浸潤型増殖を示す傾向がリンパ球型, リンパ球優位型にくらべて強いことが明示され, 腫瘍の細胞構成における上皮性細胞優位は, 胸腺腫が臨床的に悪性であるか, あるいは悪性化能を有する可能性が高いことを示す組織表現の1つとしてとりあげられるべきことが肯定された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸腺腫, 手術成績, 肉眼的増殖型, 非浸潤型胸腺腫, 浸潤型胸腺腫
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