アブストラクト(26巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : UCG法による人工弁の機能評価―とくにBjork-Shiley僧帽弁について―
Subtitle :
Authors : 久保田宏, 酒井圭輔, 村上忠司
Authors(kana) :
Organization : 市立旭川病院胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 9
Page : 1047-1054
Year/Month : 1978 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工弁機能不全の早期発見の手段として, UCG法の応用について検討を行った. 対象はBjork-Shiley僧帽弁を使用して僧帽置換を行い, 術後UCGを定期的に行いえた21症例で, 年齢は平均42.3歳, 男性11例, 女性10例, 術後1カ月から満5年(平均2年3カ月)を経過した症例である. UCGの測定はALOKA-SSD-60B型を用い, 人工弁の最大開放振幅, 拡張期弁後退速度, 弁開閉速度, 心音図を同調させ大動脈弁の閉鎖音から人工弁Discの最大開放までの時間(A2-MVO時間)などを測定した. また, 心室中隔の運動や術後管理のために右室壁に縫着したペースメーカーワイヤーを利用して, 頻脈時における人工弁の開閉運動についても検討を行った. 正常Bjork-Shily僧帽弁のUCG波形は僧帽弁狭窄症の前尖エコーに似た鋭いE点を有する矩形波で, 弁の振幅は9±2mm, 弁後退速度30.5±4.5mm/sec, 弁開放速度252±89.2mm/sec, 弁閉鎖速度490±143.2mm/sec, A2-MVO時間0.087±0.012secであった. 弁置換後にみられる心室中隔のparadoxicalな運動は, 術後1年を過ぎた症例で著明に減少するので, この異常はreversibleなものと考えられた. 術後右心室壁に縫着したペースメーカーワイヤーを利用して検討した高頻拍時のBjork-Shiley僧帽弁の開閉運動は, 毎分150の頻拍でも確実に開閉しているのが確認された. 人工弁機能不全の早期所見としては, 自験例と文献的考察から, 尖鋭なE点の消失, 弁拡幅の減少, 弁最大開放時間(A2-MVO時間)の変動などが参考になると考える. 以上, UCG法はほかの検査法にくらべnon-invasiveであり, 簡単にくり返えし行いうるので, 術後長期の観察を要する人工弁の機能評価にさいしては理想的な検査法であり, 特にtilting disc valveにおいてはUCGと心音図の同調記録が望まれる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Bjork-Shiley弁, 人工弁機能不全, UCG, 心室中隔運動, A2-MVO時間
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