アブストラクト(26巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺水腫発生の機序ならびにその病態生理像に関する研究―とくに血管作動性物質との関連において―
Subtitle :
Authors : 原信之
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部胸部疾患研究施設
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 9
Page : 1085-1092
Year/Month : 1978 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 麻酔犬を用い大量輸液によって肺水腫を作製し, 肺水腫発生時の気道内圧, 肺動脈圧, 体血圧および肺リンパ流量の変動を検討した. さらに肺水腫発生の機序ならびにその病態生理像と血管作動性物質との関連を検討するため, 肺水腫時の肺リンパ液および気道泡沫の生理活性物質をTissue organs bioassay法を用いて測定した. 1)4% Dextran-saline溶液の急速注入によって気道内圧および肺動脈圧は経時的に著しく上昇した. 体血圧は溶液注入開始初期の間は上昇したが, 気道に泡沫を認める頃より次第に低下した. 2)肺リンパ流量は, 肺動脈圧の上昇とともに増加した. すなわち溶液注入前では10分間の平均値は0.70mlであったが, 溶液注入開始後10分では3.38ml, 次の10分では5.30ml, 気道に泡沫を認め始めた20~30分では8.36mlと著しく増加した. 3)肺水腫時に採集した肺リンパ液および気道泡沫中に生理活性物質の増加を認めた. すなわち肺水腫時の肺リンパ液では, モルモットの摘出気管平滑筋切片および胆嚢平滑筋切片を, 一方気道泡沫では, 前2者の平滑筋切片にさらにラットの摘出胃平滑筋切片をも著明に収縮した. またこれらの摘出平滑筋の収縮反応は, ヒスタミン, セロトニン, カテコーラミンおよびアセチルコリンなどの拮抗剤によって影響されなかった. これらの平滑筋収縮反応の特徴から, プロスタグランジF2αあるいはブラジキニンなどの血管作動性物質の放出が推測された. 以上の結果より, 肺水腫の際には各種摘出平滑筋を著明に収縮する生理活性物質が放出されており, これらの物質が肺水腫発生の機序ならびにその病態生理像発現に重要な関連があることが考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺水腫, 生理活性物質, 摘出平滑筋, 肺リンパ液, 気道泡沫
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