アブストラクト(26巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ファロー四徴症の心血管造影像 -手術による推移について-
Subtitle : 原著
Authors : 山本勇造, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 10
Page : 1151-1166
Year/Month : 1978 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : ファロー四徴症に対する短絡手術が二次的根治手術に及ぼす影響を明らかにし, また根治手術に際しての右室流出路狭窄の理想的な修復方法を探究する目的で, 本研究を行った. ファロー四徴症手術例のうち, 術後に心血管造影および右心カテーテル検査を行った59例を対象とし, これら症例の術前・術後の右室造影像について, 右室流出路から末梢肺動脈にいたる各部位の直径を計測し, 術前・術後の変動, 術後の推移を観察し, さらに心内圧所見をも加味し, 右室流出路狭窄, 肺血管床ないしは左室容積が, 手術によって, どのように推移するものであるかを, 短絡手術例16例, 根治手術例43例について検討した. Blalock手術により, 右室流出路の直径は62%の症例で減少し, 弁輸部, 肺動脈幹も軽度の狭小化を示したが, 末梢肺動脈の直径は67%の症例で増加し, 同時に左室拡張終期容積も増加を示した. さらにBlalock手術後の二期的根治手術例では, 術後の肺動脈平均圧が, 一期的根治手術例よりも低い値を示した. これらの成績から, Blalock手術は末梢肺動脈を拡大して, 肺血管抵抗を減弱せしめ, 左室容積をも増大させ, 後に行われる二期的根治手術に良好な影響を与えるものと推論される. 根治手術後の末梢肺動脈直径が, 70%の症例で拡大を示した. この肺動脈の拡大により, 肺の血液受容能が増大し, 根治手術後, 次第に血行動態が改善するものと考えられた. 一方, 根治手術後に21%の症例で, 右室流出路に瘤の発生を認めた. 右室流出路瘤は流出路パッチ使用例に多発し, 流出路筋切除例にもみられた. その主な原因は, 高い右室圧と流出路心筋の過剰な切除によるものと考えられた. この右室流出路瘤は末梢肺動脈の拡大をさまたげ, さらに肺動脈弁閉鎖不全をも招来した. したがって, 流出路パッチの使用は, できるだけさけるべきであり, 流出路筋切除も, 右室圧の下降がえられる範囲内で, 可及的少量にとどめるのがよいと結論された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ファロー四徴症根治手術, Blalock手術, 末梢肺動脈直径, 右室流出路瘤, 右室流出路直径
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