Abstract : |
開心術に伴って発生するLow Output Syndromeは低血圧, 乏尿の症状とともに末梢血管が収縮するために四肢末梢の冷感を生じる. したがって中枢温(主として直腸温により代用)と末梢温(主として皮ふ温)の温度較差を測定することによりLow Output Syndromeを早期に予知しようとする試みが検索されてきた. 著者らは戸川らの改良考案した深部温度計を麻酔導入時より患者の前額部, 胸部, 手掌部, 足底部に装着して術中および術後の温度変化を観察した. 対象とした症例は, 88例で後天性弁膜疾患58例, 先天性心疾患22例, 冠動脈疾患8例であった. 一部の先天性心疾患, 後天性弁膜疾患および冠動脈疾患のうち術前の臨床症状や心臓カテーテル検査などで重症と予想された症例は手術室入室時より, 中枢温-手掌部・足底部温の較差が著明に存在し, 麻酔導入に際して強力な末梢血管拡張剤である塩酸morphineを大量静注しても, 温度較差は縮小せずに末梢循環の改善は全く認められなかった. このような症例は術後もIntensive Care UnitにおいてLow Output Syndromeの傾向があるため長時間のdopamine, isoproterenolのようなcatecholamineの点滴静注が必要であった. これらの症例は術前の心機能の低下と末梢血管抵抗の増大が特徴であり, 開心術の侵襲が加わる術後の急性期は早急な心機能の回復が充分には期待できないためLow Output Syndromeに陥り易いと考えられた. |