アブストラクト(26巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌における血管侵襲の臨床的, 病理学的検討 第1編 肺動脈撮影と手術適応の検討
Subtitle : 原著
Authors : 牧野郁*, 三枝正裕**
Authors(kana) :
Organization : *国立療養所東京病院外科, **東京大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 10
Page : 1198-1205
Year/Month : 1978 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺動脈撮影による従来の手術適応の判定基準では, 右肺動脈上幹病変に対し一定した見解がなく, 診査開胸となることが折々あった. 肺静脈病変の診断についても, ほとんど見るべき報告はない. 本研究では切除肺・剖検肺を用いて, 右肺動脈上幹閉塞像に対する切除適応基準と, 肺静脈病変の肺血管像所見について検討した. 1. 右肺動脈上幹閉塞像に対する切除可能性判定 (i)右肺動脈上幹壁に不整像が認められる場合, もしくは不整像はなくてもA1, A3の分岐前に閉塞を示す場合は切除不能であった. (ii)壁の不整はなく, しかもA1, A3に分岐後閉塞した場合は切除可能であるが, 奇静脈, 上大静脈の合併切除を要した. (i)では, 肺進入前の, すなわち肺外の肺動脈における著明な癌侵襲を意味し, 右肺動脈上幹は右主気管支および上大静脈と癌性に癒着し, 一塊となった状態を示していた. (ii)では, 腔内の肺動脈における癌侵襲を意味しており, 切除可能の限界と考えられた. 2. 肺静脈中枢側閉塞の肺動脈造影所見 腫瘍を通過する肺動脈は, 造影の欠如ないし不鮮明な起始部像となる. 腫瘍の外を走行する肺動脈は不完全な造影所見を示すが, 連続撮影的には充盈時期のおくれ, 動脈相の遷延化, 前毛細管造影の欠如などの所見が認められた. いずれも静脈相は造影の欠如を示した. 3. 肺静脈中枢側病変の診断 肺静脈の中枢側病変を非閉塞性のものと閉塞性のものとに分けると, 前者の読影は肺動脈からの還流血流により可能であるが, 著明な肺動脈病変を合併する場合は肺静脈の造影はえられない. 一方後者では, 肺静脈の造影は欠如する. この両者の鑑別は, 肺動脈像においてなしうることを知った. 逆に, 著明な肺動脈病変を合併するとき, 肺静脈に非閉塞性病変があるか否かを診断することは不可能であるが, 腫瘍の存在位置が重要な点で, 上肺静脈病変はS3発生の, 下肺静脈病変は下気管支幹発生の癌においてその頻度は高いと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 選択的肺動脈撮影, 手術適応診断, 右肺動脈上幹閉塞像と切除可能性判定, 肺静脈中枢側閉塞の血管造影像, 肺静脈中枢側病変の診断
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