アブストラクト(26巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁置換後の遠隔成績 -とくに社会復帰を中心として-
Subtitle : 原著
Authors : 田中稔*, 土岡弘通*, 阿部稔雄*, 清水健*, 石原智嘉*, 村瀬允也*, 彦坂博*, 吉岡研二*, 大宮孝*, 小林正治*, 小林淳剛*, 宮田義彌*, 野垣英逸*, 椙山直敏*, 柿原理一郎*, 竹内栄二*, 弥政洋太郎*, 佐々木常雄**
Authors(kana) :
Organization : *名古屋大学医学部第1外科教室, **名古屋大学医学部放射線科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 10
Page : 1206-1213
Year/Month : 1978 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 名古屋大学第1外科教室において施行した大動脈弁置換症例で生存退院し, その消息を知り得た32例について術前の臨床症状, 検査結果と術後遠隔期の社会復帰状態を比較し, 同時に術後の状態に影響をおよぼす合併症についても検討した. 32症例の内訳は, 退院後の死亡が8例で他は全て術後1年以上の生存例である. 手術方法は人工心肺を使用して, 冠潅流と心筋局所冷却で心筋保護を行い, 術後は原則としてワルファリンを使用して抗凝固療法を行っている. 術前の臨床検査所見としては, NYHA機能分類, 心電図所見, 左室拡張終期圧, 左室拡張終期容量, 左室収縮終期容量, 1回心拍出量, 駆出率を検討し, 術後の状態の把握には, 1)NYHA機能分類, 2)運動能力, 3)仕事の内容, を中心としてアンケート調査を行い, おのおのを比較検討した. 遠隔死亡8例中4例に突然死がみられたが, 術前の検査結果との相関は得られなかった. 術後合併症の原因としては, 代用弁自体の機能, 抗凝固療法の不徹底, 手術手技上の問題, 手術時の輪血に関連するものであった. 現在使用されている人工弁では抗凝固療法は必要であり, 当教室でもワルファリンを使用してトロンボテストを20%前後に維持しているが, 外傷, 手術, 出産などで出血による問題が生じたものは1例もなかった. 術前の検査所見は, 左室拡張終期圧14.3±6.7mmHg(平均値±標準偏差), 左室拡張終期容量200±69ml/m2, 左室収縮終期容量120±52ml/m2, 1回心拍出量80±41ml/beat/m2, 駆出率0.40±0.15であった. 術後の運動能力等の社会復帰状態との相関をみた場合, 術前駆出率0.40以上のものに満足すべき結果が得られており, 職業内容に関しても一般事務員に相当するもの, あるいはそれ以上の仕事に従事しており, 大動脈弁置換術を施行するには, 術前の駆出率が0.40以下でない方が, 術後良好な運動能力を期待できるものと結論を得た.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁置換症例, 術前左室機能, 駆出率, 社会復帰
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