アブストラクト(26巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 1才未満における重症純型肺動脈狭窄症の外科治療に関する臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 原田昌範*,**, 和田寿郎**
Authors(kana) :
Organization : *東京女子医科大学第1外科学教室, **日本心臓血圧研究所外科部門
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 10
Page : 1240-1249
Year/Month : 1978 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 過去12年間に1才未満に心不全および低酸素血症で発症入院した純型肺動脈狭窄症26例に対して, 右室容積, 右室圧, 血液ガス分析値, 心胸廓比と手術方法との関係を検討した. 本症に対して, 動脈管の開存せる群をI群, 開存しない群をII群とし, さらに, 三尖弁閉鎖不全の併発する群をIa群, IIa群, 併発しない群をIb群, IIb群とした. I群とII群の間では動脈管の自然閉鎖による本症の自然経過が異なるため, とくに動脈管への依存性の高いI群は月齢3ヵ月以内に, より緊急性を持った手術が求められ, さらには術後進行性に低酸素血症と代謝性アシドーシスが増悪する群として臨床的に重症であった. 右室収縮期圧ではその平均値および広がりで群の間に有意の差が認められなかったが, 体血圧より等しいか, これを凌駕していた. また, 心胸廓比は三尖弁閉鎖不全による右房拡大とは相関性を持ち, 器質的, 機能的三尖弁閉鎖不全を評価する上で有用であって, その増減のみで病状の進行の程度を示すには不適当であった. 一方, 右室拡張末期容積においてI群では正常予測値より小さい症例が有意に多いのに反して, II群では正常予測値以上であった. 手術術式として, II群は肺動脈弁切開術が最も効果的であり, I群でも右室容積の大きいものには弁切開術の効果が期待できるが, 小さい右室容積のものは動脈管への依存度が高いため先ず短絡術を考慮せねばならない. しかも弁切開術として最も合併症の少ない, より効果的な術式として経心房性肺動脈弁切開術を7例に行い優れた成績を得た. さらに, 低体温麻酔下手術は各種の不整脈を招きやすいため, 本症への適用には慎重であるべぎである. 他方, 外来管理上, I群に対してはその自然予後が極めて悪いため, 良好な血液ガス分析値や動脈管の開存に眩惑されて手術時期を失わない様十二分に心掛けるべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : I群, II群, 動脈管への依存性, 正常予測値, 経心房性肺動脈弁切開術
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