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肥大心および不全心に発生する開心術後の低心拍出量症候群, 術中の虚血性心筋の変化から生ずる心筋強直に対拠すべく, これらの疲弊心筋の開心術中の保護法として, 冷却液による間歇的冠潅流法について検討し, とくに, 臨床上, 最も重要な機能面からの検索として, 心筋保護前および後の左心機能について, 報告も少ないので検討を行った. 実験動物として仔犬の上行大動脈に圧差15～20mmHgの絞扼術を施行し, 術後6～9ヵ月経過した左心室肥大犬14頭を使用した. 心筋保護群の8頭は冠血管床を利用して, 完全体外循環下に2時間の大動脈遮断を行い, 0～4℃の乳酸リンゲル液を大動脈の基部から注入し, 肥大心筋を均等に冷却し, 心内膜下および心外膜層に温度計を刺入して, 心内膜下温度を15℃に保持した. 一方, 心筋非保護群では2時間の大動脈遮断を行い常温(27～33℃)で経過観察を行った. 左心機能の検索として, 心筋保護前および後の大動脈圧, 左心内圧, 左心室終末拡張期圧(LVEDP), 心拍出量, 一回心拍出量, 一回心仕事量, 仕事量とLVEDPとの相関, 左室最大dp/dt, 左室dp/dt/等容圧(I.P.), およびVmaxについて検索を行った. 冷却液による冠潅流法は冠血管床を利用することにより, 疲弊心筋の代謝を均等に抑制することが可能であり, 2時間の肥大心筋保護後, 心筋の圧発生機能, 心筋ポンプ機能および心筋収縮力はコントロール群の心筋保護前に比べ10～23%減少したが, 人工心肺からの離脱は可能であり, 離脱後も十分な左心機能を保持していることを認めた. 一方, 心筋非保護群の6頭は全例, 人工心肺からの離脱は困難であり, うち2頭に心筋の強直(stone heart)を認めた. 以上, 冷却液冠潅流法は左心室肥大心を2時間の虚血から十分耐えることを証明し, この方法は開心術中の心筋のトーヌスを緩げ, 静止無血視野で手術操作を容易にさせうる. |
