アブストラクト(26巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌における血管侵襲の臨床的病理学的検討 第2編 肺癌の脈管侵襲に関する基礎的検討
Subtitle : 原著
Authors : 牧野郁*, 三枝正裕**
Authors(kana) :
Organization : *国立療養所東京病院外科, **東京大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 11
Page : 1325-1337
Year/Month : 1978 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺癌切除肺を用い, 脈管構成の成り立ちを次の5項より検討し, 下記の結論を得た. (1)発生気管支との関連性 伴行する発生気管支とともに腫瘍内に消滅する型の肺動脈は, 腫瘍を経由する型のものよりも, またこの場合腫瘍の中心を通過する肺動脈は, 辺縁走行のものよりも癌の侵襲度は高度であった. (2)肺静脈閉塞 肺静脈の閉塞がある場合, これに潅流する肺動脈は腫瘍内で著明な癌侵襲を受け, 閉塞ないし著明な狭窄をきたす. (3)転移リンパ節 肺門リンパ節への癌転移率は, 扁平上皮癌, 未分化癌, 腺癌の順に高まる. 転移リンパ節と肺門部血管との癌性癒着例を組織学的に検査し, 小細胞癌例に血管浸潤を認めた. (4)発育進展様式 扁平上皮癌は血管に対しては圧迫が一義的, 腺癌は浸潤が第一で, 圧迫は軽微. 小細胞癌は圧迫, 浸潤ともに非常に強かった. (5)脈管浸潤 a)血管浸潤 35例中の19例, 54.3%に認められた. 扁平上皮癌は41.2%, 腺癌は71.4%, 未分化癌は63.6%, 小細胞癌だけでは100%であった. b)肺静脈浸潤 扁平上皮癌は45.5%, 腺癌は83.3%, 小細胞癌は100%に認められた. c)肺動脈浸潤 扁平上皮癌は23.5%, 腺癌は57.1%, 小細胞癌は66.7%に認められた. d)肺静脈浸潤と予後 備後1年以内に53.3%が死亡. 肺静脈幹およびその主分枝への浸潤, 健常肺静脈との合流点への浸潤など流血との接触が考慮された. e)肺動脈浸潤と予後 80%に肺静脈浸潤を合併し, 予後との間には直接の相関は認められず, 随伴する肺静脈浸潤の状況に帰着された. f)腺癌の栄養血管 腫瘍内肺動脈はいずれも血流の途絶した所見を示し, 栄養血管とはなりえなかった. 以上から, 肺癌の脈管構成は腫瘍組織型本来の脈管侵襲性に基づく内的な因子と発生気管支との関連性, 静脈閉塞等の外的な因子の双方から規定されることを知った. そして血管侵襲を助長する要因として, 血管内圧の減少, すなわち血流の停滞ないし途絶を重視した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺癌の脈管構成, 肺癌の脈管侵襲, 肺静脈浸潤と予後, 血管内圧減少と癌侵襲, 腺癌の栄養血管
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