Abstract : |
雑種成犬に常温稀釈体外循環を行い, 放射性標識微粒子法を用いて, 全身の血流分布率および臓器血流量ならびに脳内および胃腸管内局所血流量と局所血流分布率を測定し, 体外循環潅流圧が全身血行動態ならびに脳内および胃腸管内局所循環に及ぼす影響を検討した, 1)潅流圧90mmHgでは, 気管支動脈および脾の血流量のみ体外循環前(対照)と比較し有意に減少した. 潅流圧60mmHgでは, 気管支動脈血流量とその血流分布率のみ対照時より有意に減少した. 潅流圧30mmHgでは, 脳, 心および肝動脈の血流量についてを除き, 他の全ての部位では対照時より血流量が有意に減少し, 全身血流の著明なcentralizationを来していることを認めた. 2)潅流圧90mmHgでは, 脳血流量はその局所も含め対照時より有意に増加した. 潅流圧60mmHgでは, 脳血流量はその局所血流量も局所血流分布率も含め, 対照時と有意差を示さなかった. 潅流圧30mmHgでは, 脳血流量はその局所も含め対照時と有意差を示さなかったが, 脳幹の局所血流分布率は増加し, 逆に大脳半球の局所血流分布率が減少傾向を示すなど, 軽度に脳血流量の分配率に異常を示した. 3)潅流圧90mmHgでは, 対照時と比較し, 胃体部, 十二指腸, 小腸中枢側, 結腸および直腸で粘膜の血流量が減少した. 胃腸管粘膜の局所血流分布率は, 結腸および直腸についてを除き, 他の全ての部位では対照時より有意に減少した. 潅流圧60mmHgでは, 対照時と比較し, 全ての部位で粘膜の血流量が有意に減少ないし減少する傾向を示した. 粘膜の局所血流分布率は, 胃体部のそれが対照時より有意に減少したほか, 他の全ての部位においては対照時と有意差を示さなかった. 潅流圧30mmHgでは, 対照時と比較し, 粘膜血流量は, 胃前庭部および小腸末梢側についてを除き, 他の部位では全て有意に著減した. 粘膜の局所血流分布率は, 胃前庭部についてを除き, 他の部位では全て対照時より有意に減少した. 以上の結果より, 60mmHgないしそれ以上の潅流圧で体外循環を行うことが望ましいと考えた. |