アブストラクト(26巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後症例に対するDopamineの使用経験
Subtitle : 原著
Authors : 末広茂文, 宮本巍, 清水幸宏, 小澤正澄, 大橋博和, 鈴木文也, 三輪智久, 山下克彦, 岡本英三
Authors(kana) :
Organization : 兵庫医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 11
Page : 1383-1391
Year/Month : 1978 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和49年12月より昭和52年3月までの開心術症例161例のうち91例(57%)に対し, 術後の低心拍出量状態の改善と血行動態の早期安定化を目的としてdopamineの投与を行った. 本剤の投与は500mgないし1,000mgを5%糖液250mlに稀釈し静脈内に持続注入した. 投与量は約5μg/kg/minから開始し, 臨床症状, 各種の血行動態の指標を観察しながら臨床的に良好な一般状態が得られる量まで漸増, ときに漸減しながら維持量とした. これらのdopamine投与症例91例につき臨床的検討を行い, 次の結果を得た. 1)91例中57例はdopamine 10μg/kg/min未満の投与にて安定した血行動態が得られたが, 中等症~重症と考えられた症例に於ては10μg/kg/min以上の投与量が必要であった. すなわち10~19μg/kg/minの投与例は15例で, うち1例が死亡し, 重篤なる低心拍出量状態のため, 20μg/kg/min以上の投与を必要とした症例は19例で, このうち12例が死亡したが, 生存例7例においては本剤の投与が極めて有効であった. 2)死亡症例13例の検討を行ったが, 大部分の症例では単なるpump failureによる低心拍出量症候群だけではなく, 他の循環動態を悪化させる因子が合併していた. 3)本剤とisoproterenolの併用を35例に行った. 生存例24例における本剤の投与量は0.7~22.2μg/kg/minで, isoproterenolの併用量は0.001~0.205μg/kg/minであったが, このうち20例では頻脈, 不整脈の発生もみられず良好な血行動態が得られた. 4)20例で本剤の投与にchlorpromazineを併用し, chlorpromazineによるafter loadの軽減により, 本剤の作用をより強化できるものと考えられた. 5)本剤投与中に本剤によると考えられた不整脈の発生はみられなかった. 以上よりdopamineは単独に用いても, また, isoproterenol, chlorpromazineなどとの併用によっても開心術後の血行動態の改善に有用な薬剤といえる. 本剤の投与量は5~19μg/kg/minが適当と考えられるが, 症例によっては20μg/kg/min以上を用いても有効であると結論できる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : dopamine, isoproterenol, 低心拍出量症候群, chlorpromazine, 不整脈
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