Authors : |
横田博雅*, 川島康生*, 森透*, 橋本聰一*, 高野久輝*, 賀来克彦*, 村田弘隆*, 浜路政靖*, 安達盛次*, 高尾哲人** |
Abstract : |
われわれは中等度低体温法を併用した体外循環使用下開心術中の血中の糖および脂質代謝面よりの検討をした4)結果, 体外循環中にはインスリン分泌が抑制されていることが判明した. しかしこのインスリン分泌抑制のメカニズムについては, 充分な結論を得ることができなかった. 故に本研究では開心術を施行した48症例を主として, 体外循環法, 充填液の糖液の使用の有無, α-受容体遮断剤(phentolamine)の使用の有無によって次の6群に分けて検討した. すなわちI~IV群は常温下で気泡型人工肺を用い, V, VI群は中等度低体温下に円板型人工肺を用いて体外循環を行った. I, IV, V, VI群は充填液に糖液を使用, その他の群では使用しなかった. phontolamineはIII, IV, VI群に使用した. これら6群について開心術を通じて, 血中の糖, インスリンの変動から体外循環中のインスリン分泌機能について検討を加え以下の結果を得た. 1)I, III群では体外循環開始と共に徐々に血糖値は上昇したが, インスリン分泌増加はみられなかった. 2)II, V群では体外循環開始と共に生体に糖負荷されたにも拘らず, これに反応したインスリン分泌増加はみられず, 体外循環終了1時間後にインスリン分泌増加がみられた. 3)IV, VI群では体外循環開始と共に生体に糖負荷され, これに反応したインスリン分泌増加がみられた. 以上の結果より体外循環中のインスリン分泌抑制は, 体外循環中に併用する低体温よりも体外循環そのものに起因する生体反応と考えられた. phentolamine使用によってインスリン分泌増加がみられたことから, 体外循環中のインスリン分泌抑制には膵のα-受容体刺激状態による直接的作用であると考えられた. |