アブストラクト(26巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ファロー四徴症における肺血管床の微細構造に関する研究 -臨床検査所見との関連について-
Subtitle : 原著
Authors : 岸本淳, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部外科第II講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 11
Page : 1414-1427
Year/Month : 1978 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : ファロー四徴症における肺血管病変を, 肺生検標本について, 32例で光顕的検索を, うち28例では電顕的検索を行い, これらの組織学的所見とpolycythemia, Hb値, Ht値などの血液所見, 肺動脈造影による末梢肺動脈狭小度ならびに肺シンチグラムによる肺血流分布障害などとを比較検討し, 次のような結果を得た. 1)赤血球数700万以上, Hb値19g/dl以上, Ht値60%以上の症例では, 肺小動脈の内膜の肥厚が極めて高度で, 血栓形成を中心とする広範囲な閉塞性病変がみられるものが多い. 2)肺毛細血管の微細構造については, 基底膜, 肺胞上皮細胞の肥厚は極めて軽度で, 毛細血管内皮細胞のみが特異的に肥厚し, 且つpolycythemiaの増強に伴い, その肥厚度が増強する. 3)肺動脈造影で, 末梢肺動脈狭小が中等度以上の症例では, 肺小動脈の内膜および毛細血管内皮細胞に肥厚がみられるものが多い. 4)肺シンチグラムは肺の血管病変の程度をよく反映しており, 両側肺血流分布障害がみられる症例では, 肺小動脈から肺毛細血管におよぶ高度な閉塞性病変が存在する頻度が高い. 5)短絡手術後の症例では, 赤血球数, Hb値, Ht値が軽度の増加を示すにすぎないものが多く, 肺小動脈および肺毛細血管もほぼ正常の構造を示し, 広範囲な閉塞性病変はほとんどみられない. 以上の結果から, polycythemiaが高度で, 末梢肺動脈造影で末梢肺動脈狭窄が中等度以上であり, 且つ肺シンチグラムで両側肺血流分布障害がみられる症例では, 幼少時に適切な短絡手術を施すことが有効と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 赤血球増多症, 肺の微細構造, 肺血管病変, 末梢肺動脈狭小, 肺シンチグラム
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