アブストラクト(26巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁膜症に対する人工弁置換後の肝腎機能障害について
Subtitle : 原著
Authors : 酒井良明, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 11
Page : 1428-1444
Year/Month : 1978 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 手術が行われた重症の僧帽弁膜症49例(MVR 18, MVR+他弁手術31)の術後に, 高度の黄疸および腎障害の合併がみられたので, 肝腎機能障害について検討し, 考察を加えた. これらの49例を術後の血清ビリルビン値(以下S-ビリルビン値), 血中尿素窒素値(以下BUN値)にしたがい, 次の4群, すなわち, I群-肝腎同時障害例11例(S-ビリルビン値≧6.00mg/dl, BuN値≧50mg/dl), II群-高度黄疸例9例(S-ビリルビン値≧6.00, BUN値<50), III群-腎障害例5例(S-ビリルビン値<6.00, BUN値≧50)およびIV群-非障害例24例(S-ビリルビン値<6.00, BUN値<50)に分類した. 49例のうち, 11例が術後死亡(2週以内の早期死5, 2週以降入院中の後期死6)を遂げたが, 11例中10例はI群に属し, 術後の肝腎同時障害は極めて重篤な合併症であることが判明した. II・IV群でのS-ビリルビン値6.00mg/dl以下の黄疸は, 主として溶血性黄疸であったが, I・II群でのS-ビリルビン値6.00mg/dl以上の黄疸は, 肝内閉塞性黄疸で, さらにI群の腎障害は胆汁ネフローゼによるものであった. I・II群の発生は, 三尖弁閉鎖不全症を伴った重症例に多く, 術前の肝腫大, NYHA IV度, さらに術前の右房圧, S-ビリルビン値, BUN値が高いこと, および長時間の体外循環, 多量の輸血などが重要な因子と考えられた. 術直後の血行動態もLOS, 高いCVPなどが関連していると考えられたが, 血行動態の改善にもかかわらず, 肝腎障害が非可逆的に進行し, これが死因となった症例もあり, かかる肝腎障害から脱却しえたのは, 血液透析が行われた症例のみであった. 予防法および治療法としては, 術前のS-ビリルビン値が2.00mg/dl以上, BUN値が30mg/dl以上の肝腎機能低下例はむしろ手術の適応外と考えられ, いったん発生した肝腎障害に対しては, 血液透析のみが有効な治療法と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 重症僧帽弁膜症, 術後肝腎機能障害, 肝内閉塞性黄疸, 胆汁ネフローゼ, LOS
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