Abstract : |
Prostaglandin E1(PGE1)は, 血管拡張作用, Lysosomal enzyme遊離抑制作用および抗血小板凝集作用があることから, 著者らはPGE1の出血性ショックにおける肺微小循環に対する影響を検索する目的で実験を行った. 実験方法の雑種成犬を脱血して平均体血圧を40mmHg 2時間維持し, ついで脱血液を返血することによってショック肺を作製した. 返血後, 実験動物を2群に分け, 第1群はPGE1 1μg/kg/minを20分間注入するPGE1治療群, 第2群は同量の生理的食塩水を注入する無治療群である. これら2群の返血後のおのおのの肺微小循環を中心とする血行動態, およびin situ cinemicroscopya, こよる肺微小循環の変化について比較検討を行い, 以下の成績を得た. 1)PGE1治療直後の体血圧は対照値の65%(無治療群75%), および肺動脈圧は対照値の110%(無治療群122%)であり, 無治療群と比較して有意に減少した(p<0.01). 2)PGE1治療直後の心拍出量は対照値の82%(無治療群70%)であり, 無治療群に比較して有意に増加した(p<0.01). 3)PGE1治療直後の末梢血管抵抗は対照値の73%(無治療群105%)であり, また肺血管抵抗は対照値の136%(無治療群178%)であり, 無治療群に比較して有意に減少した(p<0.05). 4)PGE1治療群の肺動脈楔入部圧-小肺静脈圧較差, および肺動脈圧-肺静脈楔入部圧較差は無治療群に比較して有意に低下し(p<0.05), 肺毛細血管床の血流障害を改善したことを示唆した. 5)in situ cinemicroscopyによる肺微小循環, 特に肺表面下方からの観察では, 循環血流量, 特に毛細血管血流量は増加し, 血管壁の汚れ, 無気肺, 赤血球擬集, 間質性浮腫等, 肺損傷の程度は無治療群に比較して軽度であった. 以上の実験成績から, PGE1の血管拡張作用はショック肺における肺微小循環に対して良好な影響を与えることが判明した. |