アブストラクト(26巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 急性心筋梗塞に対するIntraaortic Balloon Pumping(IABP)の効果に関する実験的ならびに臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 塩澤拓男, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学第2外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 12
Page : 1501-1517
Year/Month : 1978 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1)実験的研究:急性心筋梗塞作成犬26頭の自然経過と, 心筋梗塞作成後にIABPを実施した35頭の成績とを比較した. 対照群の死亡率54%に対し, 実験群のそれは31%と低く, 死亡するまでの時間も後者が長かった. 梗塞犬にIABPを実施すると, 大動脈拡張期圧は25~40%上昇, 冠血流量及び心拍出量は20~30%増加, 左室拡張末期圧は10~15%下降し, 心表面誘導心電図においても虚血状態の改善が認められた. さらに, 剖検により梗塞範囲を確認しえた24頭について, 梗塞範囲が左室自由壁の50%以下の群(16頭)と, 50%以上の群(8頭)の2群に分けてIABPの効果を比較した. その結果, 梗塞範囲が50%以下の群では, IABPの著明な効果が認められたが, 50%以上の群では, IABPは無効であった. 以上の実験的研究から, IABPによるdiastolic augmentationおよびsystolic unloadingの効果が確認された. 2)臨床的研究:急性心筋梗塞後に心原性ショックに陥った11例に対し, IABPを実施した. 男8例, 女3例で, 年齢は52~72歳(平均61歳)であった. IABPの実施時間は3~72時間(平均35時間)で, 9例において著明な効果が認められた. 4例でIABPからの離脱に成功したが, 1例が心筋梗塞の再発により死亡し, 長期生存は3例(27%)である. 4例でIABP実施中安全に冠動脈造影が実施され, うち1例で緊急手術(single bypass+infarctectomy)が可能であった. 又3例で剖検がなされたが, 梗塞範囲はそれぞれ左室自由壁の42%, 46%, 54%であり, 一方生存の1例のアンギオ所見から梗塞範囲は34%であったことから, 40%以上の場合にはIABPのみでは救命しえないことが明白となった. IABPの副作用, 血栓形成, 動脈壁の損傷などは認められなかった. 以上, IABPは心筋梗塞後の心原性ショックに甚だ有効であることが, 実験的ならびに臨床的に確認された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Acute myocardial infarction Cardiogenic shock, IABP, Diastolic augmentation, Systolic unloading
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