Abstract : |
心臓外科領域の発展はめざましく, 複雑心奇型, 重症弁膜症さらに虚血性心疾患と各分野での手術適応は拡大され, したがって開心術後の循環動態を従来よりもより適確に把握する必要性が生じてきた. 今日, 皮膚温度較差, 指尖容積脈波, インピーダンスカルジオグラフなど非観血的方法により循環動態を評価し, 心機能を知ろうとする試みは多い. 著者らは術前, 術後経時的に心機図およびインピーダンスカルジオグラフを用いて心機能, 心拍出量の測定を行い, 開心術前後の血行動態を検討し, 術後の心機能の評価に極めて有意義であることを知ったので報告する. 心機図は頚動脈波, 心音図, 心電図を同時記録して, Q-I, Q-II時間, 駆出時間ejection time(ET), 前駆出時間preejection period(PEP), 等容収縮時間isometric contractile time(ICT), ET/PEPを計算し, 心拍数の因子を除外するため, 沢山の方式によりΔQ-II, ΔET, ΔPEPに換算した. 同時に日本光電社製インピーダンスカルジオグラフにより心拍出量を測定した. 測定は術後2時間, 6時間, 24時間, 3日, 1週間, 3週間目に行った. 開心術を施行した35例を3群(I群 ; 先天性心臓中隔欠損症5例, II群 ; 僧帽弁狭窄症17例, III群 ; 虚血性心疾患13例)に分けて検討し, 次の結果を得た, 1)術直後, ETは各群ともに短縮し, III群, II群, I群の順で, III群での短縮が最も著明であり, III群の回復が最も遅延した. 2)PEPの延長はI, III群にみられ, I群は24時間, III群は3日目に正常範囲内, II群は術直後から改善がみられた. 3)ET/PEPでみると, I群では24時間で正常範囲内, II群およびIII群での回復は遅延し, 正常範囲に入るのに3週間を要した. 4)ET/PEPは心拍出量とよく相関し, LOSの早期発見のよい指標となった. 5)虚血性心疾患では術後3日目までは心機能の低下がI, II群と比べて著明であることを念頭において術後管理を行うべきであるとの確信を得た. |