アブストラクト(26巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 僧帽弁膜症の外科治療における手術危険因子の検討
Subtitle : 原著
Authors : 中村和夫, 中井勲, 浅野孝治, 畑沢幸雄, 青山安治, 岡村龍一郎
Authors(kana) :
Organization : 鳥取大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 26
Number : 12
Page : 1556-1562
Year/Month : 1978 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室において手術が実施された僧帽弁膜症36例について手術危険度に関与する因子を検討した. 症例を病型によってMS群(21例), MI+TI群(8例, うち3例はMI単独), MS+TI群(7例)の3群に分けて検討した. 実施された手術は僧帽弁に対しては交連切開術24例, 弁置換術12例, 三尖弁に対しては弁輸縫縮術10例弁置換術2例であった. 手術後死亡は36例中3例, 死亡率8.3%であったが, この3例はいずれもMS+TI群に属し, かつ, 高度の低心拍出状態で死亡したものである. そこでこの手術死亡例に特徴的な手術危険因子を追求すべく, 患者の年齢, 術前心拡大の程度, 心電図上の電気軸及び左室肥大所見, 肺動脈圧, 心拍出量, 左室拡張末期圧, 左室駆出率など, 術前諸検査成績について比較検討した結果, MS+TI群, なかんずくそのうちの手術死亡例では年齢が高く, かつ, 病悩期間が長いことと, 心拍出量が他の群に比し著しく減少していることが特徴的であったが, それ以外の項目については他群との間に相異を認めなかった. さらに死亡3例を除く生存症例について術後心拍出量の推移を検討してみるとMS群およびMI+TI群では術後比較的速やかに心拍出量が増加したのに反してMS+TI群では術後6時間は心拍出量は逆に減少し, その後も72時間までほとんど増加しないことが判明した. このような術後心拍出量の減少は僧帽弁および三尖弁機能障害の残存や循環血液量の不足によっては説明できず, したがって僧帽弁狭窄症の重症型とも考えられるMS+TI群では弁の機能障害とは別個の機構が働いて術後も低心拍出状態が持続するものと考えられた. このような症例では術後管理上細心の注意を払う必要があり, またできうればかかる事態にたちいたるまえに, すなわち安静時心指数が2.0l/min/M2以下に減少する前に手術を実施すべきであると考えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁膜症, 心拍出量, 手術危険因子, 三尖弁逆流
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