Abstract : |
開心術症例の術前・術後管理に血管拡張剤によるunloading therapyを行い, 循環動態, 血液ガスの変動およびその有用性を検討し, 以下の結果を得た. 1)開心術後急性期症例ではLAMP>15mmHg群でCI 32%増加, LAMP 23%下降が得られたが, LAMP<15mmHg群では有意の変動を示さなかった. また, 容量負荷による左室機能曲線決定ではLAMP 18~20mmHgを境界として上行脚より水平・下行脚へと変化した. 血液ガス面では, LAMP>15mmHg群では血管拡張剤投与後PaO2は25%減少し, A-aDO2, Qs/Qtは33.7%, 32.1%有意に増加した. この間, 肺循環動態ではPDP 14.8%下降, PBV 33.7%増加をみた. 2)術前症例では, 重症AIの管理に著効を認め逆流の減少, 狭心痛軽減, 循環動態の安定を認め手術成績は向上した. とくにバルサルバ洞破裂合併例では左右短絡の減少, 右心不全軽快がみられ, 解離性上行大動脈瘤合併例では, 逆流減少, 肺高血圧緩解, 血圧低下による動脈瘤破裂の予防が得られた. 一方, AIの慢性管理使用では腎機能の改善, LVHの軽減が得られ強心利尿剤との併用によりその効果は増大すると考えられた. 以上の結果から, 血管拡張剤によるunloading therapyは開心術後急性期症例ではLAMP>15mmHg, AP正常~高値, CI減少例が適応と考えられ, AP低下例ではβ刺激剤との併用が有効であり, また術後hypovolemiaの補正も心室充満圧とのバランス下に適正に行え有用である. 術前症例では後負荷, 前負荷以外に逆流, 短絡も減少し有効な治療法と考えられた. これら血管拡張作用により前後負荷の減少, hypovolemiaの補正により著明な循環動態の改善が得られたことより, 末梢血管因子, 心筋因子両面からLOSの成因とその機序を推論し病態分類を試みた. |