Abstract : |
われわれの教室では, 1966年2月16日完全房室ブロックの66歳男子に対して, 固定レート型ペースメーカー植込みを経験して以来, 1977年末までの約12年間に118例に対して248個のペースメーカー植込みを施行したので, その植込み成績と最長12年間の遠隔成績について検討した. ペースメーカー植込みの適応は完全房室ブロックが85例で最も多く, ついで洞結節機能不全症候群の28例であった. またこれらのペーシング様式は心室ペーシング109例(125回), 心房ペーシング10例(11回), 心房波同期ペーシング9例(9回)であった. 植込み後の合併症をみると, 電極の断線は141本中12本にみられ, うち心筋電極10本, 心内膜電極2本であった. 心内膜電極の心内膜接触面からの離脱は28本中9本(32%)にみられた. 刺激閾値上昇によるペーシング不全は心筋電極によるペーシング97回中6回, 心房ペーシング11回中2回で, 心房ペーシングで高率であった. ペースメーカー本体に関するものでは, 固定レート型ペースメーカーの29例中9例に競合現象をみとめ, うち1例では心室細動に移行した. デマンド型ペースメーカーにおけるセンシング不全は172個中8回みとめ, 偽センシンダ2回, オーバー・センシング3回, アンダー・センシング3回であった. ついでこの12年間における死亡例は21例であったが, これらの約半数の死因が突然死あるいは心疾患以外のものであり, かつ10年生存率が73%と良好であることはペースメーカーの効果を示すものであり, ペースメーカー植込みは患者の社会復帰に加えて, 多大な延命効果をもたらしていることが窺える. 一方ペーシングに関連した1例を含めて突然死が5例にみられたことは, より綿密な患者管理体制の確立が必要であることを示唆しているものと思われる. |