Abstract : |
表面冷却および加温によるエーテル深麻酔下超低体温実験で静肺コンプライアンスの変動の追求と肺内リン脂質の分析を行って, 肺サーファクタントの面より超低体温麻酔の肺におよぼす影響を検討しつぎの結果を得た. 1. 静肺コンプライアンスは5~7℃の体温下降により軽度上昇するが, その後体温下降とともに徐々に低下した. 復温開始後もほとんど変化なく, 復温終了2時間後に回復した. 2. 肺組織におけるDPL含量は20℃前後の最低温時には減少しないが, 37℃の復温直後には約30%の減少がみられ(P<0.01), 復温終了2時間後では冷却前値近くまで回復した. 3. 肺胞洗浄液より回収した粗肺表面活性物質のレシチンにおける(とくにβ位)パルミチン酸の占める割合は, 最低温時に軽度低下がみられ(P<0.05), 復温直後ではさらに低下し(P<0.001), 復温2時間後でも冷却前値までは回復しなかった. 4. 自律神経遮断剤を使用し, 冷却および加温操作を加えないエーテル深麻酔単独では, 静肺コンプライアンスや肺内脂質にほとんど変動を認めなかった. これらの結果より, 従来強調されてきた超低体温麻酔による肺庇護効果は完全ではないと思われ, 超低体温麻酔を施行するにあたっては肺サーファクタントの積極的な保護をはかるとともに, 術後少なくとも2時間は慎重な呼吸管理が必要である. |