Authors : |
島崎靖久, 森透, 北村惣一郎, 松田暉**, 中埜粛, 友国隆**, 八木原俊克, 横田侃児*, 川島康生 |
Abstract : |
単心室症の根治手術を困難にしている種々の解剖学的因子について多くの検討がなされてきているが心室容積からの検討は少ない. 著者らは根治手術(心室2分割)に当り心室容積の大きさが本症の手術適応及び手術方法に大きく関与するものと考えている. 今回, 根治術後の2症例につき遠隔期の心室容積を検討した. 症例はいずれもVan Praagh分類C型, 小塚・川島分類II型に相当しテフロンパッチにて心室中隔造設術を施行し生存を得たものである. 第1例は術後7年9ヵ月, 第2例は3年1ヵ月を経た症例でともに元気な日常生活を送っている. 2方向シネ造影から心室容積を求めた. 第1例の左室拡張末期容積(LVEDV)は133ml/M2, 右室拡張末期容積(RVEDV)は98ml/M2でそれらの和は正常値の約136%を示し, 右室, 左室容積比(RVEDV/LVEDV)は0.74, また収縮期容積(ESV)のRVESV/LVESVは0.56, 駆出分画(EF)はLVEF 0.50, RVEF 0.61であった. 元来単心室なので心室全体としてみるとEFは0.55であった. 第2例においてはLVEDVは139ml/M2, RVEDVは93ml/M2でそれらの和は正常値の約160%, RVEDV/LVEDV=0.67, RVESV/LVESV=0.50, LVEF=0.31, RVEF 0.49, 心室全体のEFは0.38と第1例より低値であった. 人工心室中隔の動きを観察すると収縮期に低圧の右室側へ張り出し, 拡張期には左室側へ動くparadoxical movementがみられた. この動きが右室より左室のEFが低値を示す原因であり, これには右室, 左室の圧比, すなわち右室圧が低いことによるものと考えられた. 心室2分割には正常の心室よりも大きい容積が必要と考えられた. 運動負荷時の変動については第1例は良好な結果を得たが, 第2例は第1例程より成績ではなかった. |