アブストラクト(27巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺高血圧症を伴う乳幼児期先天性心疾患の肺コンプライアンス-臨床像, とくに呼吸不全との関連について-
Subtitle :
Authors : 河合克郎, 麻田栄
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 3
Page : 288-299
Year/Month : 1979 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺高血圧症を伴う乳幼児期先天性心疾患における呼吸不全は, 患児の予後と密接な関連を有しており, 臨床的にはいわゆる“硬い肺”としてとらえられてきた. 著者は, 食道内圧の変化と換気量の測定から肺コンプライアンスを求め, この値と血行動態, 臨床経過並びに臨床検査成績とを対比して検討し, 以下のごとき成績をえた. 1. 新生児より12歳までの心肺系に異常のない対照群21例では, 肺コンプライアンスは身長と極めて良い相関を示し, 両者の間の回帰式y=0.247x-8.746が成立した. この式から, 肺コンプライアンス係数=肺コンプライアンス+8.746/身長×0.247を求めることができた. この係数の正常値は1.0であり, この係数の値によって体格の異なる各年齢層を通じ, 肺の硬さを比較することが可能となった. 2. 生後2ヵ月より9歳までの肺血流量増加を伴う先天性心疾患群49例では, 対照群に比して, 肺コンプライアンスは低値を示し, 就中, 肺高血圧群では概して著明な低下が認められたが, この中には肺コンプライアンス係数の極めて低い症例があった一方, ほとんど正常に近い値を示した症例もあり, この差が臨床経過の相違となって現われていることを知った. 3. 高度の肺高血圧を伴う症例では, 肺コンプライアンスは加齢とともに低下したが, 大きな低下は生後6ヵ月までに起こると考えられ, 7ヵ月以後には著明な低下は認められなかった. 4. 生後7ヵ月以前に肺コンプライアンス係数が0.8以下となったPp/Ps 0.75以上の10例では, 内科的療法によっては呼吸困難をコントロールすることができず, 全例1歳未満で姑息的或は根治的手術が必要であった. 5. VSD根治手術の術後数ヵ月においては, 肺コンプライアンスが改善された症例が多かった. 改善がみられない症例では, さらに長期のfollow upが必要と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺高血圧症, 硬い肺, 肺コンプライアンス, 肺コンプライアンス係数, 乳児期手術
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