アブストラクト(27巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 血流遮断下心筋保護の臨床的検討
Subtitle :
Authors : 羽柴厚, 岩喬, 船木芳則, 船田隆, 横井克已, 林外史英, 山田哲司
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 3
Page : 300-307
Year/Month : 1979 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 教室では1977年5月より, 長時間大動脈遮断を要する手術症例に対して, 高K冷却冠潅流液による間歇的冠潅流法を施行してきた. これら臨床例の術後の心蘇生状態, 不整脈の発生等の循環動態, 術後の血清酵素の推移等の検討を行い良好な結果を得た. 潅流液は, 高K(30mEq/L)による急速心停止, 低Na(47mEq/L), 高浸透圧(380mOsm)による組織の浮腫とno-reflow現象の防止, 弱アルカリ液(pH 7.5)によるアシドーシスの軽減を目的として作成した. 心筋温は心室中隔温を持続的に測定し, 15~20℃を維持するように約30分毎に再潅流を行った. 潅流温は4~6℃, 潅流量は1回当り300~600mlであった. 結果1)潅流開始後10~20秒で心停止がみられ, 十分弛緩した心臓と無血静止野が得られた. 2)潅流液使用群で遮断時間は40~140分平均86分であったが, 遮断解除後60%に自然拍動再開が得られた. 3)術後不整脈や心室細動の発生率, 術後心電図変化の検討でも, 非使用群に比べ有意に良好な結果であった. 4)術後血清酵素の推移では, 潅流液使用群で最も変動は少なく, とくにMB-CPKは長時間大動脈遮断にもかかわらず, 同程度の大動脈遮断を要した潅流液非使用群はもちろん, より短時間の心室細動群より低値であった. MB-CPKは心筋に特異的で術後4~8時間で最高値に達し, 以後速やかに減少するため, 術中の心筋保護効果のよい指標と思われた. 5)大動脈遮断時間が120分もあれば, 3弁手術(AVR+MVR+TAP)を含め, 現在施行されているほとんどすべての手術が終了しうるので, 本法は一応満足すべき心筋保護法と思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋保護, 大動脈血流遮断, 局所心筋冷却, 冠潅流
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