アブストラクト(27巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心冷却による開心術中心筋保護に関する研究(第1報)
Subtitle :
Authors : 草川実, 大井勉, 岡田行功, 金田正徳, 水谷哲夫, 鈴木俊郎, 木下肇彦, 坂井隆, 生駒静正, 矢田公, 千種弘章, 磯島明徳, 湯浅浩
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 3
Page : 308-315
Year/Month : 1979 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環下開心術中の心筋保護法は, 手術成績の向上のために最も重要な補助手段といえる. われわれは心冷却を中心とした心筋保護法について検討を加えた結果, 臨床的には, 60分以内の大動脈遮断は局所心筋冷却法により, 60分以上の大動脈遮断には体外循環による急速冷却を加えた局所心筋冷却法(Kirklin法)を用いることにより, また大動脈切開を要しかつ90分以上の大動脈遮断を要する症例では冷却血液による低温低流量冠潅流を用いることにより心筋保護を行っている. 本選択基準により手術中の心筋保護を行った最近の69症例の後天性心疾患では手術死亡例はなく, 術中冠潅流が不充分であったBentall手術など2例を除き術後管理も容易であり, これらの心筋保護法ならびにそれに伴う大動脈遮断時間は妥当なものと考えられた. われわれの用いている心筋保護法のうち, 中心冷却と心筋局所冷却法を用いるKirklin法について, 大動脈遮断時間の安全限界を探るため実験的に検討を加えた. まず中心冷却による急速冷却を行い心筋温を19℃とし, 大動脈遮断後, 体外循環潅流温を28℃とした際の60分間遮断では, 遮断解除後の心機能および心筋の電顕所見から, 心筋の変化は可逆性ではあるが不安定で, 臨床応用に際してはさらに短時間の大動脈遮断にのみ用いうる方法と考えられた. これに対し, 中心冷却と心筋局所冷却を併用し心筋温を常に13℃に維持し90分間大動脈遮断を行った実験犬では心機能, 心筋の電顕像ともに良好な回復を示しており, 心筋肥大を有する臨床例に対しても充分安全に応用しうる方法と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋保護, 局所心筋冷却, 急速潅流冷却, 低温低流量冠潅流, 心内膜下壊死
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