アブストラクト(27巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺切除術後早期における呼吸機能の変動に関する臨床的研究-とくに機能的残気量および肺内シャントについて
Subtitle : 特掲
Authors : 小野裕三, 瀬在幸安
Authors(kana) :
Organization : 日本大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 3
Page : 341-356
Year/Month : 1979 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開胸手術後, 長期にわたって低酸素血症が続くことが認められているが, その病態生理学的因子として, 肺胞性低換気, 拡散障害, true shunt, 換気/血流不均等および心拍出量の低下などが知られており, その主役は換気/血流のアンバランスを含め, 無気肺の存在がもっとも重視されている. 著者は胸部手術後の低酸素血症と潜在性無気肺の発生を知る目的で, 41例の各種胸部疾患に対する. 全葉切除術, 肺葉切除術, 肺部分切除術および肺切除を伴わない開胸術後にFRC computerを用いて, FRCを中心に肺気量の測定と同時に動脈血ガスおよび肺内シャントを測定し, 検討した結果は下記の如くである. 1)全症例において術後第1病日に著明な低酸素血症をみとめ, 肺部分切除群を除いて術後2週間に亘り低酸素血症が持続した. 2)術後に高炭酸ガス血症は認められず, すべての症例において第3病日頃まではPaCO2は却って低値を示した. 3)肺葉切除術後の肺内シャントの増加は, QS/QTの増加から, true shuntが主役であり, FRCの著明な低下は末梢小気道の部分的な閉塞と推測される. 4)肺全葉切除術後のFRCの著明な低下は, 肺内シャントの増加が軽度のことから, 肺実質の喪失による肺気量の減少が主因である. 5)開胸, 非肺切除術群においてみられる低酸素血症は, 肺内シャントの増大が主体で, FRCの比較的著明な低下を伴っておることから, 末梢小気道の閉塞が疑われる. 6)年齢別に各パラメーターの推移を50歳以下群と50歳以上群で比較すると, 50歳以上群に術後低酸素血症が著明で, しかも長期間持続し, その主体はA-aDO2の増加, QS/QTの増加ならびにFRCの著明な低下から末梢小気道の閉塞が強いものと考えられる. この研究から術後の無気肺の存在を早期に知るためにFRC computerによるFRCの測定は有意義であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 低酸素血症, 機能的残気量, 肺内シャント, 換気血流不均等, 無気肺
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