アブストラクト(27巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 実時間処理の周波数分析による人工弁機能診断 第II編 基礎的検討
Subtitle :
Authors : 佐藤尚, 香川謙, 仁田新一, 堀内藤吾, 田中元吾*
Authors(kana) :
Organization : 東北大学胸部外科, *東北大学抗酸菌研究所内科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 6
Page : 857-866
Year/Month : 1979 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工弁音の周波数分析法による血栓弁の早期診断能の限界を究明するため, 血栓の付着部位および厚さと弁音の高周波成分減少との量的関係をモデル実験により対比検討した. 血栓弁モデルは弁のstrutまたはvalve ringに犬心膜を縫着して作成した. 心膜は重ねる枚数により, 0.4mmから1.2mmまで厚さを変化させ, 縫着部位により以下の4群に分類した. I群-strutの交差部, II群-開放時にoccluderと接するstrutの全面, III群-valve ring上の1個所, IV群-valve ring上の3個所で, 人工弁はStarr-Edwards 6120弁および同2320弁を使用した. モデル循環は人工心臓用ポンプ等により構成されるが, その中に血栓弁モデルを挿入して, 弁の開閉音の周波数分析を行った. 分析は臨床例と同様, 実時間処理の可能な周波数分析装置を使用し, 高周波成分の指標としてnormalized maximal frequency(NMF値)を使用した. また同機種人工弁を使用した臨床例についてのNMF値の正常下限値, ならびに臨床経験より異常と見做された600Hzの減少幅に, それぞれモデルの対照群平均値/臨床例平均値比を乗じてモデル実験における診断基準とした. 実験の結果, II, IV群等, occluderとstrutあるいはvalve ringとが心膜に妨げられて直接接触しない縫着様式の群では縫着心膜の肥厚に対応してNMF値が減少し, 0.6~0.8mm厚程度の心膜により正常下限値もしくは600Hz以上の減少値が認められた. 一方III群のように心膜を縫着してもoccluderとstrutあるいはvalve ringとが直接接触する群ではII, IV群よりNMF値の変化が少なかった. 以上より, 血栓の付着部位で異なるが, Echo法, 心血管造影などで検出不能な0.6~0.8mm厚程度の血栓が周波数分析法により診断可能と推定され, 本法が血栓弁の早期診断法として有用であるとの結論が得られた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工弁機能不全, 血栓弁, 弁音周波数分析, モデル循環, 血栓弁モデル
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