アブストラクト(27巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環下開心術における血管作動物質の肺代謝に関する研究-血漿セロトニンおよび血小板の変動
Subtitle :
Authors : 志田寛, 森本雅巳, 井之川孝一, 津金次郎, 池田裕, 杠英樹, 黒田孝井
Authors(kana) :
Organization : 信州大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 6
Page : 867-873
Year/Month : 1979 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年, 肺の代謝機能が注目され, 肺における血管作動物質の代謝が漸次解明されつつある. セロトニンは肺においてその大部分が代謝される血管作動物質の1つであり, 従来, 外科領域においても, エンドトキシン・ショック, ショック肺, 肺塞栓および肺高血圧などのchemical mediatorとして, セロトニンの役割が強調きれてきた. ところで, 肺を一時的にバイパスする体外循環下開心術において, 血管作動物質の肺代謝を追求することは, 術後肺合併症あるいは低心拍出症候群などとの関連において重要である. 今回は体外循環下開心術における, 血漿セロトニンの変動を追求し, 同時に51Cr標識血小板の血中survivalおよび肺・肝のsequestrationを検討した. 血漿セロトニンは体外循環中低下し, 術後24時間で前値にまで回復する. また, 術後におけるLOSの発生と血漿セロトニンの変動との間には密接な関係は認められないが, 術後血栓々塞症にて死亡した症例は著明に血漿セロトニンの増加を示した. 体外循環中肺におけるセロトニンの不活性外が低下するにもかかわらず, 血漿セロトニンの低下する機序はなお明確でではないが, セロトニンの産生低下とともに肺におけるセロトニン摂取増加が推測された. 血小板は血漿セロトニンと同様循環中は低下するが, その回復はセロトニンに比し遅延した. また, 51Cr標識血小板の変動をみると, 血中survivalの減少と相呼応して肝におけるsequestrationは増加するが, 肺におけるsequestrationは不変であった. したがって, 多くの場合術後合併症におけるセロトニンの関与は少ないと考えられるが, 肺における血小板のnormal kineticsあるいはセロトニン摂取に異常をきたすような病態においていわゆるserotonin-induced pulmonary in juriesが惹起されるものと推測される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 開心術, 血漿セロトニン, 肺代謝, 血小板
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