アブストラクト(27巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 4℃低温潅流保存法による保存心臓の心筋代謝に関する実験的研究
Subtitle : 特掲
Authors : 黄書成, 杉江三郎
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 6
Page : 874-886
Year/Month : 1979 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 剔出心臓の体外保存実験, あるいは剔出心臓を利用した簡易な心蘇生, 機能検査回路による基礎的なモデル実験は複雑な実験条件を単純化できることから将来の心筋保護研究での潅流液組成の検討に極めて有用なものであろうと考えられる. 著者は, とくに心筋のviability評価の1つの方法として心筋代謝を独自考案した回路を使用して検討したので報告した. 心蘇生, 機能回路の冠潅流圧, 心筋温を一定としたもので生体の動脈血を潅流液として使用した. 心筋代謝指標として冠血管低抗, 心筋酸素摂取率, 同消費量, 血液乳酸, ピルビン酸値測定から算出した心筋Excess LactateおよびRedox Potentialなどについて実験群別に検討し比較した. 非保存正常心の対照群で, これら諸指標の正常範囲が決定され次の値を得た. すなわち冠血管抵抗:1, 500dyne-sec.cm-5以下, 心筋酸素消費量:5ml/min/100g左室重量以上, 心筋酸素摂取率:40%以上Excess Lactateは(-)Redox Potentialは(+)となっている. 体外長時間保存心については保存時間群別にこれらの諸指標を種々検討し, 実験群別にviabilityの程度を評価した. (24時間, 48時間および72時間群)保存時間の長い群程viabilityは著しい低下を示すと判断できる結果が諸指標の総合的評価で明らかとなったが, 縦来の拍動状態の観察から最良の機能をもつと想定していた教室の蘇生度分類(+++)がほとんどであった24時間群でおいてすら, かなり明かなviability低下がしめされるものが多く, わずか50%弱で, ほぼ正常範囲に入る値が観察されたにすぎなかった. 今回の研究結果から, 教室の長時間心保存法での保存限界は, 明確に24時間以内にあることが判明した. 今回使用した, 心蘇生, 機能検査用回路は, 若干の改良を加えることでworking状態での血行力学的検査, 代謝学的検査にも発展応用できる可能性をもっていることから, 将来の関連した実験的研究で広く使用されるべきものといえよう.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 4℃低温潅流心保存, 心蘇生法, 心筋代謝, 心筋viability
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