Abstract : |
大動脈バルーンパンピング(IABP)が効果を示さなくなった重症心臓性ショックの治療のために, より強力な次のステップの補助循環として, いかなる補助が臨床的に実用可能かという事については, 議論が続いている. われれは心臓性ショック犬において, IABPと酸素化装置のないV-Aバイパス(VAB)との併用法の急性実験を施行し, その血行動態に及ぼす効果をそれぞれ単独法と比較し, 併用法がIABPの次のステップの補助循環になりうるかどうかを検討した. 動物実験において, 心臓性ショックに陥った6頭の犬に10回の併用法を施行した. 酸素化装置のないVABの回路は右房から脱血し, 大腿動脈に環血した. バイパス流量はコントロールの心拍出量の約3分の1とした. コントロールと比較した併用法の血行動態に及ぼす効果は次の通りである. 平均大動脈圧は5.8±8.0%(平均±S.D.)増加した(p<0.05). 平均収縮期圧は7.0±2.2%減少した(p<0.001). 平均左房圧は12.2±4.5%減少した(p<0.001). 心拍出量は8.5±5.2%減少した(p<0.001)が, 全身潅流量は24.8±5.8%増加した(p>0.001). TTIは12.3±5.2%減少した(p<0.001). 左心室一回仕事量は14.6±4.1%減少した(p<0.001). つぎのことが結論される. 1)心臓性ショック犬における急性実験により, 併用法においてはIABPと同程度に左心室afterloadが減少し, VABと同程度に平均大動脈圧は増加した. 全身潅流量の増加, 平均左房圧の減少, 左心室一回仕事量の減少はそれぞれ単独法と比較して最も大きかった. 2)以上の事により, 併用法は臨床実施方法の容易さと相まって, IABPが効果を示さなくなった重症心臓性ショックの治療のために, より強力な次のステップの補助循環の1つとなりうることが示唆された. |