Abstract : |
交通事故に起因した非穿通性心臓外傷(steering wheel injury)で腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症(M.I.)を経験した. 患者は38歳で, 受傷時はとくに急性心不全症状は著明でなかったが, その後労作時の呼吸困難, 動悸を訴えるようになった. 心電図, 胸部レ線所見ではとくに異常なかったが, 超音波検査上後尖の粗動が若干認められ, 腱索断裂が疑われた. 左室造影上では僧帽弁閉鎖不全症は, Sellers分類III度と高度であり, 手術にふみ切った. 胸骨正中切開すると心膜心筋には異常なく, ゆ着もなかった. 右房を切開すると三尖弁にも異常はなかった. 経中隔性に左房に達すると, 後交連部の2本の腱索が断裂している所見がみられた. 手術はまずこの2本の断裂した腱索の弁尖付着部と乳頭筋を縫合し, 後交連部のValvuloplastyを加へ, さらに後交連部を中心に半円周に弁輪縫縮術を加えた. 術後心雑音は全く消失し, 術後検査でもM.I.は消失し, 弁機能は良好であった. 本例は非穿通性単独僧帽弁疾患の手術例の報告てしては6例目にあたるが, 本法と同様の術式の報告はない. |