アブストラクト(27巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 刺激伝導系の電気生理学的術中探査による外科的伝導障害防止の臨床経験と考察
Subtitle :
Authors : 田宮達男, 西沢直*, 鈴木一郎*, 白松一安*, 松沢邦夫*
Authors(kana) :
Organization : 国立千葉病院循環器科千葉大学第2外科, *国立千葉病院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 7
Page : 981-989
Year/Month : 1979 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 外科的伝導障害防止策の一環として, 開心術中に電気生理学的房室伝導系の探査(術中HBE採取)を試みた. 検査対象は, ASD, VSD, PS, TOFの計40例で, 装置にはSiemens Elema mingograph 34, 電極には試作品またはElecath PT-97を使用した. 当初atrial pacing法を導入したが, 原則的には自然拍動下に探査した. 手技の修熟後は伝導系棘波を高率に記録し, 最近では経VSD左室側中隔探査をも試みている. 本法により探査した疾患別の伝導系走行は大略次ぎの如くであった. 二次口型ASDでは正常走行を示した. VSD I型でも正常走行で, 欠損下縁とは通常可成りの距離があった. II, III型では走行が欠損下縁に接近し, かつ欠損が後下方に位する程, 走行も欠損下縁に近接乃至浮上する傾向がみられる. TOFでも, VSD II, III型と類似の走行を認めたが, 左室側探査の結果, VSDよりも左室寄りにHis束が心室中隔に進入するとの印象が強く, Levらの光顕的探査の結論と一致していた. VSD後下縁自体より, その直下の三尖弁根部附近に高いH波を記録することが多かった. VSD下縁中央部にも高い棘波を記録(His束分岐部乃至)右脚波と推定された. 探査右脚はLancis乳頭筋またはその附近を走るが, 多少個体差があり, この棘波記録部への侵襲はCRBBBを頻発するようである. 本法ではmoderator band level以下の右脚走行探査は困難であった. VSD左室側下縁の前部1/2にも棘波を認めた. ここへの侵襲はしばしばLAHBを招来し, 左脚前枝の分布が考えられた. これらの資料に基き, 諸ブロック回避を意図した縫着糸刺入出部を模式図で示した. 最近右室縦切開を短縮かつ末梢側に加えたところ, 右室流出路狭窄症の術後CRBBBは激減したが, TOFではなほ約20%に認めた. 後者には右脚中枢側傷害関与の可能性が強い. 本法のみでは房室伝導系走行の細部を明確にすることはなほ困難である. 但し, scalar ECGと併用することにより, 外科的伝導障害の防止にかなりの成果を納めることができた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 外科的刺激伝導障害, His束心電図(HBE), H波, 脚ブロック
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