アブストラクト(27巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 横隔神経電気刺激呼吸の研究
Subtitle :
Authors : 松山陸奥彦, 杉江三郎
Authors(kana) :
Organization : 北海道大学医学部第2外科学教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 7
Page : 990-1002
Year/Month : 1979 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 従来, 各種呼吸不全に対して, 主として陽圧呼吸様式による呼吸補助が行われ, 大きな治療効果を挙げているが, 反面, 気道内圧上昇による肺組織, 循環系におよぼす非生理的な影響も多く指摘されてきた. 一方,横隔神経を電気刺激することによって横隔膜を収縮させ, それによって換気を行わしめる横隔神経電気刺激呼吸(Electrophrenic Respiration;以下E.P.R.とする)は, 陰圧換気であり, この点より生理的な呼吸に近いものと考えられる. 本研究においては, (1)E.P.R.を長時間行った際, 時間の経過とともに換気量の減少が見られるが, この云わゆる“神経疲労”の対応策についての検討. (2)Normovolemic状態におけるE.P.R.と陽圧呼吸(Positive Pressure Respiration以下P.P.R.とする)の循環および肺組織におよぼす影響の研究(3)Hypovolemic状態におけるE.P.R.とP.P.R.の循環におよぼす影響についての比較検討を行った. 各実験において10~15kgの雑種成犬各10頭づつを用い, 次の結果を得た. (1)長時間E.P.R.における換気量の減少は, 単相刺激波による場合はE.P.R.開始後24時間においては, 約56%に減少するのに対し, 二相性刺激波の場合にはその減少はほとんど見られず, より長時間のE.P.R.が可能である. (2)Normovolemic状態におけるE.P.R.とP.P.R.の比較では, 大動脈圧に関しての差異は見られなかったが, P.P.R.においては著明な中心静脈圧および肺動脈圧の上昇を来し, また肺組織においても明らかな障害を認めた, 一方, E.P.R.における循環動態は, 自発呼吸における状態に極めて近く, 肺組織障害も少なかった. (3)HypovolemicにおけるE.P.R.とP.P.R.の比較では, P.P.R.においては施行後直ちに急激なる循環不全を来し, 致死的になるのに対して, E.P.R.においては経時的に循環動態の改善が見られた. 胸腔内圧による中心静脈圧の変動から見ても, E.P.R.は静脈還流に, より有利であり, 呼吸補助と同時に循環不全改善策としても応用しうるものである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 横隔神経電気刺激呼吸, 神経疲労陽圧呼吸, 陰圧呼吸, 静脈還流
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