アブストラクト(27巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 表面冷却超低体温時の病態生理に関する研究―肝静脈血および胸管リンパの電解質の変動―
Subtitle :
Authors : 松村弘人, 松本昭彦
Authors(kana) :
Organization : 横浜市立大学医学部第1外科教室
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 7
Page : 1003-1012
Year/Month : 1979 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 恒温動物の低温時における病態生理に関する報告は多く, 種々の問題点の解明がなされてきているが, いまだ不明の点も少なくない. 表面冷却超低体温麻酔における冷却時の血清Kの減少はKの肝臓への集積が原因とされている. そこで著者は肝臓にとりこまれたKの復温時の動向(再分布)を検索し, それらに関して生じる低温時の肝臓の病態生理を追求すべく実験的, 臨床的研究を行った. 冷却時36℃, 30℃, 22℃, 復温時27℃, 30℃, 36℃で末梢静脈血と肝静脈血を同時に採血し, 血清電解質, 血糖値, インシュリン, 血液ガスおよび酸塩基平衡を測定し, これらを比較検討した. また実験的に胸管リンパの採集を冷却, 復温過程で連続して行い, これの電解質(Na, K)を測定した. この結果, 次のごとき知見を得た. (1)肝静脈血のKが末梢静脈血のKより減少し, とくに復温27℃, 30℃で有意に減少していた(p<0.01). (2)胸管リンパのKが復温32℃以降, 末梢静脈血のKにくらべて有意に増加した(p<0.001). この結果から復温時のKの再分布は主としてリンパ系を介して行われることが判明した. (3)肝静脈血のインシュリンと血糖値が末梢静脈血のそれらより, とくに復温時増加していた. これは肝臓でのブドウ糖, インシュリンの代謝が著明であることを示し, この際, Kの肝細胞内への移行により肝静脈血のKが減少した. (4)肝静脈血のpHおよびBase Excessが末梢静脈血のそれらより正常範囲に近く維持されていた. (5)肝静脈血のPvO2が著しい低値を示し(p<0.05), 低温下でも肝臓は酸素消費量が大であった. (6)低温時, 肝臓での代謝機能の維持とKの肝臓へのとりこみは合目的な反応と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 表面冷却超低体温法, 肝静脈血, 胸管リンパ, 電解質
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