アブストラクト(27巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部大動脈瘤手術について
Subtitle :
Authors : 鯉江久昭
Authors(kana) :
Organization : 天理よろづ相談所病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 27
Number : 7
Page : 1018-1025
Year/Month : 1979 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部大動脈瘤手術における1時的バイパス法使用の利点は, 出血量のすくない事の他, 体外循環法採用時に見られるような呼吸器合併症の発生を避けうる事であろう. 著者は7例(平均年齢56歳)の胸部大動脈瘤手術を本法を用いて実施した. そのうち急性解離性大動脈瘤の1症例を術後13日目に下肢の広範な壊死等に由来する腎不全で失った他はすべて術後に著明な合併症を来すことなく生存退院せしめえた. 全例で1時的バイパスの中枢端を大動脈に直接吻合し, そのうち5例で上行弓部大動脈・外腸骨動脈間に1時的バイパスを設置した. 平均バイパス時間は2時間で, その間の尿量は20ml/hrないし130ml/hrであった. 30℃前後の表面冷却低体温を併用した. 開胸は左第4或いは第5肋間開胸に加うるに, 同一皮切下で下部肋間開胸を通常追加した. 6例において胸骨上半の縦切開を追加したが胸骨横断せず両側開胸を避けた. 肺結核の陳旧性病巣と30年余の気管支喘息の既往を有し, 術前1秒率54%, %肺活量78%であった解離性下行大動脈瘤症例で術後呼吸器合併症や著明な出血を見なかった. 特記すべき1例は59歳女子, 上行大動脈遠位部から下行胸部大動脈下部に及ぶ紡錘状大動脈瘤の全置換と, 左肺全摘を実施した症例である. 術前高度の呼吸不全を有し, 25mm径Y型人工血管および16mm径人工血管を1時的バイパスに使用した. 大動脈置換に加うるに, 修復不能な左気管支壁壊死と左肺無気肺のため左肺全摘を余儀なくされたが, 術後は全く順調で術後17時間で酸素テント等の酸素療法をもはや必要としなくなった. 胸部大動脈瘤手術に際し著者の採用しているこの様な方法即ち胸骨横断を避け片側のみの開胸と表面冷却軽度低体温併用1時的バイパス法の採用が術後呼吸器合併症を防ぐうえに大いに有効であると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部大動脈瘤, 1時的バイパス, 肺全摘, 術後呼吸不全, 動脈瘤手術
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